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ストラテジー(世界情勢と投資戦略)

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あなどれない!前FRB議長と現在のFRBメンバーの先行き見通しの差   2021/05/11(火)08:17:54  
   5月4日のイエレン米財務長官(前FRB議長)のテレビインタビューが流れた後、米国の株式市場が一時動揺する場面があった。
 イエレン財務長官は「米政府が財政支出(8年間で約2兆ドル(約216兆円)国内のインフラ投資策による雇用創出策である「ジョブズプラン」に加え、10年間で約1.8兆ドル(約194兆円)の教育や子育てなどの支援策となる「ファミリープラン」)を拡大し、米国経済が成長を加速させると、(長期)金利は上昇する可能性が高い。米経済が過熱しないように確実にするためには、(政策)金利は小幅に上昇せざるを得ないかもしれない」と発言。これが、政策金利の早期引き上げにつながるかもしれないとして、発言後は金融市場でやや警戒ムードがでている。
というのも、5月12日発表される4月CPI(消費者物価指数)、13日のPPI(消費者物価指数)は大幅上昇見通しとなっており、治まりかけたFRBによる早期利上げ懸念を再燃させかねないからだ。
 わかりやすく説明すると、昨年のコロナショック前後は、CPIは、2020年2月:前年比+2.4%、2020年3月:前年比+2.1%、2020年4月:前年比+1.4%で推移していた。FRBの物価目標の指標であるPCE価格指数では、2020年2月:前年比+1.8%、2020年3月:前年比+1.3%、2020年4月:前年比+0.5%で推移。昨年の3月以降は米国で新型コロナ感染が深刻化するなかで、物価が急速に低下していた時期にあたる。FRBの物価目標は現在、安定的に∔2.0%であるので、PCE価格指数に比べるとCPIの方が数値が高めに出る傾向があるのだが、12日に発表される2021年4月CPIは+3.6%見通しであり、13日に発表される2021年4月PPIは、+5.8%見通しと、昨年低下していた反動で、今年は上昇しやすいという要因が重なって、大幅な上昇見通しになっているのである。
 4月28日のFOMC後の会見で、パウエルFRB議長は、「物価の指標としているPCE価格指数は一時的に(目標である前年比+2.0%を)超えるけれども、米国経済は雇用と物価の両面で目標からは程遠く、目標の達成までにはしばらく時間がかかる。労働市場で失業者が多い状況ではインフレ率が持続的に上昇する可能性は低い。新型コロナウイルスの感染拡大が収束し、米国民が経済を以前のように再開せても安全だと感じるまで、米国経済の完全回復はありえない。ワクチン接種が進み、著しい進展があるまで、引き続き金融緩和策を維持していく」とこれまで同様、足元の物価の上昇は一時的で利上げはまだまだ先だとコメントしている。
 失業者の指標の1つである新規失業保険申請件数でみると、コロナショック前の2020年3月9日の週では28万2000件で、直近の2021年4月26日の週の49万8000件と比べると、1.8倍程度も失業者が多いので、パウエルFRB議長が言うように、労働市場はまだ目標からは程遠く、目標の達成までにはしばらく時間がかかりそう。労働市場で失業者が多い状況ではインフレ率が持続的に上昇する可能性は低い。しかし、前FRB議長であるイエレン財務長官の見方では、バイデン政権の新たな2つの財政政策は、景気のさらなる上昇を後押しするので、通過すれば想定よりも利上げを早く行わなければならない気がするという主旨であるので、こういった見方も正しい可能性がある。
 なお、イエレン財務長官の4日の発言後は、現在の複数のFRBメンバーが、パウエルFRB議長と同様の発言を繰り返しており、現役FRBメンバーとFRBの大物OBとの見方には差がある。インフレ率の早期上昇懸念は、米10年債利回りの上昇要因であり、政策金利の引き上げ要因でもあるので、ドル買い要因になる。
実際、市場参加者は、パウエルFRB議長の見方に同調するか、イエレン財務長官に同調するのか、12日以降にわかってくるが、イエレン財務長官の見通しに同調する市場参加者が多くいれば、好調な米株式相場の波乱要因になるので、ドル相場、米国債相場、株式相場のそれぞれで重要な注目イベントになる。
 


危機対応で差がついてきた米英と日欧の国力差   2021/04/27(火)08:48:43  
   新型コロナウイルスの感染拡大から、克服していく過程で、ここにきて米英と日欧の先進国間での差が鮮明になりつつある。米国と英国がいち早く感染拡大を乗り越えようとしているの対し、日欧はまだ感染被害が拡大中であり、まだ感染拡大をコントロールできていない。
 米国も英国も感染被害が甚大で、感染が広がる過程では、有効な対策を打てていなかった点は共通するものの、感染からの脱却局面では、世界に先駆けた独時の取り組みが成功し、その成果が明らかになりつつある。
米国は、感染者、死者とも現時点では世界最大になっているものの、ワクチン開発にあたって、いち早く当時のトランプ大統領が「ワープスピード作戦」と名付けて、新薬開発から承認までの期間を1年以内に短縮させる下地を作り、100億ドル(約1兆800億円)という大きな予算を用意して、創薬企業の資金面での支援を整え、さらに創薬企業には最先端技術を開発している企業(モデルナ社、ビオンテック社など)に光を当てて開発に取り組んだことが、早期のワクチン開発につながり、大きな成功につながっている。その際に、開発されたワクチンの早期使用する契約を取り付けたことは、感染からの脱却面で米国民にいち早い恩恵になり、早期の克服につながりつつある。また、経済的な混乱を回避するために、かつてない規模での個人給付の実施や手厚い失業給付の点でも、大きな社会的な混乱を回避することに成功している。
 また、ワクチン接種にあたっては、優先順序をつけながらも、予約に来なかった人で、余るワクチンについては、病院側の判断で、窓口に並ぶ本来ならワクチン接種の順番ではないものの、家族に高齢者や子供たちを抱えて、ワクチン接種を早く希望する国民にも接種を認めるという柔軟な対応もうまくいっている。24日時点のワクチン接種率は、全国民の41%になっている。
 英国でも、感染被害自体は、世界第5位で甚大ながらも、ワクチンの確保という点では、ユーロ圏からの離脱を交渉しつつ、独自で動き、適正価格よりも早期数量確保を優先した。さらに、新型コロナウイルスのワクチン接種を進めるために、看護師資格がなくても一定の学歴と犯罪歴のない約3万人のボランティアを募集し、約10時間のオンライン研修と模擬注射研修を受けた後に合格させて、国民の自宅から半径16匏内に注射できる接種会場を設定することで、ワクチンの接種率を早める効果が上がっている要因となっている。ワクチン接種率が英国民の約65%を超えてきたことで、感染がひどかった首都ロンドンでは、12日からパブやレストランの屋外営業が再開され、マスクなしで通行する人の方が多くなるくらいワクチン接種の感染防止策が効果を上げている。こういった高度な政治判断が今評価され、英国の中では、ジョンソン政権の支持率は3月時点で50%以上となっている。
 欧州のドイツでは、ファイザー社と共同開発企業のビオンテック社が国内企業ながら、ワクチンの調達にあたっては、ドイツ単独で動くと欧州圏内のまとまりを崩すリスクを回避するために、交渉担当をEUに一本化した結果、現状も感染拡大がひどくなっている状態で、ドイツ国民からメルケル政権に対する不満が高まっている状況である。
 そのEUでは、ワクチンの確保にあたっては、適正価格を優先し、初期の発注量を抑えたことで、製薬企業が全体の受注量を基に、生産工場を計画したために、今年に入って各国からの注文が急増し、生産工場を慌てて増やすことで供給が遅れがちになる要因につながっており、欧州域内の国民からは、対応や判断のまずさを指摘されている。
 日本では、4月22日現在で、ワクチン接種率は全国民の2%であり、医療従事者でもまだ接種が完了しておらず、高齢者への接種が始まったばかりで、高齢者については、まだ2回目の接種を受けた人がいない状況。菅総理は16日の日米首脳会談で訪米中に、ファイザー社とのトップ交渉で、9月中に日本の全国民分のワクチンの供給を確保したとされるが、山間地などが多い日本では、厚生労働省は既存の医療機関約35900等と集団接種会場約1480ヵ所、特設会場が約4000会場を用意する計画だが、英国同様に注射を打てる人材不足から、医師と看護婦のみで対応するとすれば、実務的な制約から、来年春先までワクチン接種が完了しないとの試算もあるほどである。こういったパンデミックな危機の際には、英国のワクチンボランティアなどのような柔軟な対応も必要であると思われる。これらの実行にあたっては、政治リスクが伴うものの、米国も英国もそれは同じである中で、こうしてリーダーシップを発揮している点では、国民からの信頼度に差がついている感じがする。
IMF(国際通貨基金)は、4月5日に最新の「世界経済見通し」を公表。米国は2021年中にコロナ前よりも景気が拡大する見通し、英国、欧州、日本はコロナショック前の水準に戻るのは、2022年と予想しているものの、2022年の成長見通しによると、英国は5.1%、欧州は3.8%に対し、日本は2.5%ととりわけ日本が低いのが特徴である。中長期的に日本の国力の低下が見込まれつつあり、いずれかの時点で、為替相場では悪い円安に進む可能性がある。日本にはコロナショックからの脱却を切っ掛けにした、新たな成長戦略が求められている。
 


日米首脳会談で見えてきた日米の対中戦略と米バイデン政権のドル高戦略   2021/04/20(火)08:21:08  
   4月16日に米国で開かれた日米首脳会談は、バイデン新大統領が1月に就任して、初めて直接、対面で対話する海外の総理という点でも、バイデン政権が日本へ求める期待の強さを感じる会談となった。
 今回の最大のポイントは、対中国に対し、日米で武力衝突に備えた準備をしていくことを確認した点。特に、米国は今回の共同声明文の中で、「米国は、核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日米安全保障条約の下での日本の防衛に対するゆるぎない支持をあらためて表明した。米国はまた、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適応されることを再確認した。日米両国は尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する。日米両国は、困難を増す安全保障環境に即して、抑止力及び対処力を強化すること、サイバー及び宇宙を含むすべての領域を横断する防衛協力を進化させること、そして、拡大抑止を強化することにコミットメントした」と明記している。想定相手国は明らかに中国である。
人的なつながりが日米友情の基盤となっているとしたうえで、今後の日米協力を深化させる分野として、生命科学及びバイオテクノロジー、人工知能(AI)、量子科学、民生宇宙分野の研究及び技術開発をはじめ、第 5 世代無線ネットワーク(5G)の安全性及び開放性、気候変動対策などを重点的に共同で強化していくことに合意した。
 上記の合意を達成していくためには、日本の民間企業の協力なしでは、達成不可能であり、軍事力では三菱重工業や、川崎重工業など、5G関連は、日立、NEC、東芝など、AIではソニーグループや富士通などのビジネスチャンスが広がる可能性が高まっている。特にバイデン政権は、トランプ前政権とは違って、米国の貿易赤字問題には触れず、日本だけでなく欧州などの同盟国との連携強化を図る方針であるのが特徴である。従って、技術力と価格的に魅力的な製品の日本からの輸出増につながる可能性が高まっている。
米国からみれば、中期的に輸入品が増える場合に、ドル安よりもドル高である方が都合がいい。米国も巨額の財政赤字をさらに拡大させるのではなく、秩序だった財政のコントロールを目指すことが予想され、中期的にはドル高政策が予想される。
 足元の為替相場は、まだまだコロナ禍での景気正常化を見据えた動きが続いており、米10年債利回りの動向が主要な変動要因になっているが、政治的な対中戦略が動き出しモノの移動に具体的に表われるようになり、米10年債利回りが落ち着いてくると、ワクチン接種率の差による経済の全面正常化時期の見通しの差や、新たな国際秩序へ向けた要因が、為替相場の材料になりやすい。新型コロナウイルスの沈静化、日欧との同盟関係の深堀りなど米国のリーダーシップが意識されやすく、ドル/円相場とユーロ/ドル相場でのドル買いトレンドが続く可能性がある。
 


IMF(国際通貨基金)の最新世界経済見通しとワクチン接種率と今後の景気回復スピード比較   2021/04/13(火)10:34:09  
   4月6日にIMF(国際通貨基金)が最新の「世界経済見通し(World Economic Outlook)」を発表した。新型コロナウイルス感染がまだ拡大している中で、各国の立場の違いによる「広がる復興格差 回復を進める」をテーマに、世界経済の回復度合いを分析している。
 世界経済全体としては、米国がバイデン政権誕生後に、3月に成立させた約1.9兆ドル(約220兆円)の経済対策が、米国だけでなく世界GDP成長率の押し上げ要因になるとして、2021年を6.0%、2022年は4.4%成長見通しとしている。
 2021年は米国が先進国の中で、唯一コロナ前の経済規模を超える成長になるとし、米国自体は6.4%見通しとしている。中国は2020年にすでにコロナ感染前の経済規模を上回って成長しており、2021年のGDPは8.4%見通しとしており、中国の全人代が2021年の見通しとしている6.0%以上としている目標を大きく上回る成長を予測している。一方で、欧州や日本などは、コロナ前の経済規模に戻るのは、2022年と見通しており、コロナ感染が続く間は、経済の低迷が続き、ワクチン接種の進展度合いが大きく景気回復度合いを左右するとしている。ユーロ圏の2021年見通しは、4.4%、2022年は3.8%としている。日本については、2021年見通しは、3.3%、2022年は2.5%としている。
 こうした世界経済の回復は、2021年後半にワクチン接種効果による景気回復を前提にしており、特に強い悪影響を受けている観光業や農産業の一次産品を輸出している国々の景気回復はGDPの損失が大きくなると指摘している。特に充分な財政政策を打ち出せない国々にとっては、先進国による景気回復につれて、金利が上昇すると債務返済の困難さが高まる問題もあり、先進国は金利の上昇には、世界情勢を勘案して慎重にするように求めている。世界全体では、2020年に貧困層に分類される所得の水準の人口が9500万人も増加しており、長期的な経済の後遺症が残るのを避けるために、対応策をとるように提言している。ただし、経済の後遺症としては、各国政府の積極的な財政政策の効果から、2008年のリーマンショックよりも、少なくて済みそうだとしている。一方で、低所得国や新興国はワクチンの確保や経済対策が充分に整えることができずに、コロナ後の回復に深い傷となるリスクを指摘している。
 新型コロナウイルスのワクチン接種率を比較すると、米国では人口の35.3%にあたる1億1714万2879名が1回以上の接種を受けている。日本では、人口の1.2%にあたる159万2517名しか1回以上の接種を受けていない。ワクチン接種率はG7先進国の中では最も低い。欧州の新型コロナウイルスのワクチン接種は、ドイツ、フランス、イタリアで約17%以下とワクチン接種率が低く、遅れている。英国は、新型コロナウイルスのワクチン接種率が人口の約47%まで進んできており、7月末までには全成人についてワクチン接種を完了させるとしている。
足もとの為替相場は、米国の10年債利回りの動向が主要な変動要因になっているが、利回りが落ち着いてくると、こうしたワクチン接種率の差による経済の全面正常化時期の見通しの差が、為替相場の材料になりやすい。新型コロナウイルスの沈静化においても、米国の回復スピードの速さが意識されやすく、ドル/円相場とユーロ/ドル相場でのドル買いトレンドがしばらく続く可能性が高まっている。
 


米バイデン政権の2兆ドルのインフラ投資戦略と世界戦略   2021/04/06(火)08:33:10  
  バイデン米大統領は、3月に成立させた約1.9兆ドル(約209兆円)の追加経済対策に続き、間髪を入れずに、31日には、約2兆ドル(約220兆円)の橋や鉄道などのインフラ投資を行う経済対策案を発表した。
1.9兆ドルの経済対策の財源は主に米国債の発行で補うことが予想されていることから、米10年債を含めた長期の国債利回りの大幅な上昇要因になったものの、今回は、共和党との協議を経て修正される可能性もあり、財源の一部を増税で示したことから、米10年債を含めた長期の国債利回りの大幅な上昇要因にはまだなっていない点が特徴である。
 1.9兆ドルの経済対策は、個人への給付金や中小企業対策など、本年度中に執行されることが念頭に打ち出された対策であるのに対し、インフラ投資案の方は、規模では2兆ドルと巨額であるものの、8年間での対策となっており、年平均でみれば、1年あたり、2500億ドル(約27兆5000億円)となり、1.9兆ドルのおおよそ13%程度の規模である。
 しかし、その中身はバイデン大統領の戦略的な内容になっている。長期的な失業になる恐れのある方々へ向けた失業対策を行おうとしている点がその目的の1つ。米国内の道路建設整備、鉄道網の整備、電気自動車の給電ヵ所を50万ヵ所設置などで約6210億ドルがあてられている。インフラ投資として、橋やダムを建設することは、日本でも昭和の時代に頻繁に行われていたこともあり、新しい仕事を増やすことによって、コロナ禍で長期的な失業になるリスクの高い、飲食店や観光業では働いてきて、現在も失業状態にあるヒスパニック系や黒人の方々への職種転換を促し、失業者を減らすそうという意欲的な内容である。
 次に、中国との主導権争いで米国がリードを保ち続けることを目的にした政策として、半導体の工場誘致など設計から製造までの内製化に向けた製造業対策に3000億ドルが充てられている。また、風力発電による環境エネルギー対策に1000億ドル充てられており、新型コロナウイルスワクチンの開発で注目を集めたバイオやAI関連を後押ししていくために1800億ドルをあてるなどの内容があげられている。
一方で、資金源確保として、法人税減税の21%→28%への引き上げや、富裕層への増税を示唆。財源確保の増税については、共和党が猛反対することが予想され、この計画通りインフラ投資策が可決されるかは不透明である。3月に成立した先の1.9兆ドルの経済対策は、現在のコロナ禍での緊急対策で、年度内で1.9兆ドルが使われるものの、今回のインフラ投資案は、8年間での内容なので、効果が違ってくる。
 また、2008年のリーマンショックなど、これまでの世界の景気後退局面からの回復過程では、米国主導で世界景気の回復をけん引してきたが、今回も同じく世界景気をけん引していこうとする覚悟がうかがえる。
 中国の脅威が世界的に懸念されるなかで、トランプ政権では米国の貿易赤字の解消が重要ポイントとして注目されていたが、バイデン政権では米国の貿易赤字面には触れておらず、むしろ、人権や法制度といったルールに重点を置いて、米国の国内景気を早期に立て直し、日本や欧州からの積極的な輸出を受け入れることで、米国の世界的なリーダーとしての存在回復を目指していることがわかる。新型コロナウイルスの沈静化が進むまでは、米国のリーダーシップが意識されやすく、ドル/円相場とユーロ/ドル相場でのドル買いトレンドが続く可能性が高まっている。
 


FRBによる3月時点の米国景気先行き見通しと、FRB議長と債券市場との対話の落としどころ   2021/03/23(火)09:14:11  
   米10年債利回りの上昇が止まらない。
新型コロナウイルスのワクチン接種がようやく順調に進み始め、感染拡大ペースが鈍化してきた米国で、株式相場やドル相場に最近大きな影響を与えてきているのが、米10年債利回りの動向である。昨年10月30日には、0.877%であった利回りが、今年の3月に入って、1.6%台と4ヵ月程度でおよそ1.9倍にまで急上昇している。米国景気の回復期待と、先行きの物価上昇への懸念が、上昇要因になっている。
 米10年債利回りの上昇は、米国だけでなく、欧州や日本国債などの上昇要因になっており、11日のECB(欧州中央銀行)金融政策理事会では、キッパリと長期金利の上昇を抑えるために、国債購入を増額する姿勢を鮮明にしたことから、16日と17日のFOMCでも、長期金利上昇を明確に抑えるコメントが期待されていた。
17日のFOMCでは、声明文でこれまでになく、インフレという言葉を多用し、「新型コロナウイルスのパンデミックは、米国および世界中で多大な人的および経済的苦難をもたらしている。回復ペースが鈍化した後、経済活動と雇用の指標は最近上向いたが、このパンデミックによって最も悪影響を受けた業種(旅行、ホテル、飲食、航空など)は脆弱なままだ。委員会は雇用最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す。この長期的な目標を下回るインフレ率が続いているため、FOMCは当面、2%をやや上回る程度のインフレ率の達成を目指す。これによりインフレ率は時間とともに平均で2%になり、長期的なインフレ期待は2%にしっかりととどまる。これらの結果が達成されるまで、FOMCは緩和的な金融政策の姿勢を維持すると予想する。FOMCの最大雇用と物価安定の目標に向けてさらに著しい進展が見られるまで、FRBは引き続き米国債の保有を少なくとも月800億ドル、およびMBS(住宅ローン担保証券)の保有を少なくとも月400億ドル購入を続ける」とし、インフレという言葉をこれまでにないほど丁寧に繰り返し、脆弱な業種を含めて、雇用最大化を目指し、それまでは金融緩和を続けるとはっきり述べ、長期金利が著しく上昇するのを抑えるために、債券購入額を続けると明言しているのが特徴。長期金利の上昇を抑える旨の内容が盛り込まれたのだが、委員会後の会見で、記者がパウエルFRB議長に対し、「長期金利の上昇は景気にマイナスか。他国は上昇を抑える措置をとっているが、パウエル議長の見解は」への答えが「現在の金融政策は緩和的だが、金融市場で金利がしつこく上昇することで市場の秩序を乱すことになれば、我々の目標達成には弊害となる。政策金利の誘導水準と資産買い取りの水準は緩和的な状態を維持しており、景気を支えている」とコメント。11日のECBのように長期金利の上昇を抑えるために行動をとるといった明言がここでもないことから、米10年物国債利回りは上値を試す動きで、18日に年初来最高の1.754%台に上昇している。この10年債利回りの上昇が続いており、ドル/円相場ではドル買い・円売りトレンドが続いている。
 こうした声明文であったので、米国株式相場は2023年までの政策金利を引き上げないことを好感し、上昇している。一方で、債券市場では、同時に発表された、FRBメンバーの先行きの見通しで、インフレ率の指標としているPCE価格指数の中央値が2021年:2.4%、2022年2.0%とパウエルFRB議長が繰り返し述べているとおり、一時的には2.0%を超える場面があっても、その後低下するとしている見通しで、2023年までの政策金利据え置きが明確にになっているにもかかわらず、不信感をいただく感じで、米10年債が売られ、利回りが上昇している。 
株式市場との対話は成功しているものの、債券市場との対話で、パウエルFRB議長がうまくいっていない状況である。足元の10年債利回りが1.7%台であるのに、一時的にせよ、2.4%あたりまで物価が上昇する場合は、まだ0.7%も下落余地があることになるので、債券市場では、パウエルFRB議長の長期金利上昇を抑えるといったコメントを催促している状況になっている。
ちなみに、米地区連銀の1つである、セントルイス連銀が公表しているインフレ率を考慮したブレイク・イーブン10年債利回りは、19日現在で、2.31%以上となっており、足元の10年債利回りの1.725%と比べて、約0.6%も開きがある。この差を埋めるように10年債利回りが上昇を続けると、ドル買いトレンドが続くことになる。債券市場では、どの水準でパウエルFRB議長が、長期金利のこれ以上の上昇を望まないというコメントをするのか、試す相場展開になってきている、いわゆる債券市場の催促状況である。
今週はパウエルFRB議長が、23日に下院と、24日に上院での議会証言がある。24日の上院での証言には,前FRB議長でもあるイエレン財務長官も同席する。
ここでも、債券市場が期待しているようなコメントが得られないと、セントルイス連銀が公表しているインフレ率を考慮したブレイク・イーブン10年債利回りと、足元の10年債利回りの1.725%と比べて、約0.6%も開きを埋めるように、米10年債利回りの上昇が続く可能性がある。
 好調な米株式市場であるが、S&P500種平均株価の予想配当利回りは、19日現在で1.49%であり、これ以上の米10年債利回りの急上昇は、株式市場から債券市場への資金シフトを誘発するリスクがあるので要注意である。
ドル/円相場とユーロ/ドル相場でのドル買いトレンドがいつまで続くのかを占ううえで、注目のイベントである。
 


欧州でのコロナ感染防止策の遅れと、ユーロ安誘導にかじを切ったECB   2021/03/16(火)07:43:35  
   米国では、昨年12月にファイザー社とモデルナ社のワクチンが緊急使用許可を受けてワクチン接種が始まったものの、今年の2月あたりまでは、製薬会社の生産体制の遅れもあって、なかなかワクチン接種が進まなかった。しかし、2月27日に3社目となるジョンソンエンドジョンソン社(以下、J&J社)のワクチンを認可したことで、ワクチンの供給が増えて、ワクチン接種が順調に進みだしている。特に、J&J社のワクチンは1回の接種で抗体ができるので、今後はさらに接種率が進む見通しである。現在では、1週間で約230万回以上を接種できており、11日にバイデン米大統領は、5月1日までに、ワクチン接種を希望する18歳以上の米国の成人全てに1回目のワクチンを接種できるように各州の知事に指示を出している。
 ちなみに、18歳以上の米国の人口は、約2億5844万人いる。米国防総省では、米兵の約3分の1がワクチン接種を拒否しているとし、高齢者以外の米国人にも、ワクチン接種を拒否する人が相当数いるとされている。13日6時現在で18歳以上の米国人のうち6888万4011名が1回以上の接種を受けている。5月1日までに希望者全員の1回以上の接種が視野に入ってきた。感染が広がりにくくなるとされる集団免疫の状態は、人口の70%から90%以上免疫を持つ必要があるとされるので、5月1日時点でバイデン大統領の掲げる目標を達成できたとしても、集団免疫のできる人口の70%には届かない。しかし、8日に米CDC(疫病対策センター)は、ワクチンを2回接種できた市民は、最後の接種から2週間後には免疫ができるとして、免疫ができた後は、マスクをつけないで、社会的距離も気にせずに人と室内で会話ができる、また、免疫ができたのちに、新型コロナウイルスに感染しても、症状がでなければ、検査や隔離をしなくてもよいというガイドラインを発表した。足元では、1日に6万人以上の新規感染者が出ている状況で、感染防止対策は緩めないとしつつも、年内には、集団免疫ができ現状の移動規制や営業時間規制が解除される可能性が高まってきた。
 これに対し、欧州の感染対策は後れを取っている。1つはワクチンの供給が遅れ、接種率が低く、さらに、英国の変異型ウイルスが拡大し始めており、ドイツは都市封鎖を3月28日まで延長を決定。イタリアも15日から4月6日まで再度都市封鎖を開始しているほど。こうした事態に危機感を強めたのがECBである。
 11日に開かれたECB金融政策理事会では、現状維持が決定されたものの、「次の四半期にかけて、パンデミック緊急購入対策での買い入れを今年の初めの数カ月と比べてかなり速いペースで実施すると理事会は予測している」として、欧州でも長期金利の上昇を抑えるために、国債購入を増額する姿勢を鮮明にしたことから、世界的に各中央銀行は長期金利の上昇を抑える動きになるとして、米10年債利回りも11日には1.475%まで低下する場面があり、ユーロ/ドル相場でドル売り・ユーロ買いになり、1.1989ドルまでユーロが買い戻される場面があった。
 理事会後の会見で、ラガルドECB総裁は、「欧州経済は、継続するパンデミックと(移動制限などの)感染拡大抑制策により、2021年第1四半期の経済は再びマイナスになる可能性が高い。インフレは中期的に緩やかなペースで上昇するだろう。インフレ率は、主に一過性の上昇要因とエネルギー価格高により、過去数カ月で上昇している。一方で、需要の低迷や労働市場と生産市場における大幅な緩みができており、基調的な物価圧力は依然として抑えられている。このような状況で、大規模で持続的な市場金利の上昇が続くと、経済の全部門で、金融環境が時期尚早に引き締まるリスクがある。引き続き良好な資金調達環境をささえるなかで、市場金利の持続的な上昇は好ましくない。ECB理事会では次の四半期に月次の資産購入を大幅に拡大することが正当化されると全会一致で決定した。ただし、特別な日時や金利水準などのイールドカーブコントロールではない。パンデミック緊急購入対策の買い入れを調整していく。バイデン米大統領の(1.9兆ドルの)経済刺激策は効果があると確信している。米国内への効果が多く盛り込まれているが、米国の需要がユーロ圏や他国といった外需に向かう可能性があり、ユーロ圏の先行きの経済見通しに好影響を与える可能性がある。ユーロ圏は引き続き、高いコロナ感染拡大と、変異型の拡大に伴って、感染拡大防止が経済活動の重しになる。ECBはインフレ率が持続的に目標に向かうことを確実にするために必要に応じてあらゆる手段を調整する用意がある。中期的にインフレ率に影響する為替相場の動向を引き続き注視していく」として、長期金利の上昇抑制と、ユーロ相場の過度な上昇を警戒し、抑制する見通しを示している。
 ユーロ/ドル相場は、米10年債利回りが急上昇した、2月25日を境にして、2月26日以降は日足チャートで長期のトレンドを示すとされる75日移動平均線を割り込んで推移し始めており、ドル買い・ユーロ売りトレンドになりつつある。3月11日のECBの政策決定とラガルドECB総裁の会見で、長期金利の抑制と、ユーロ相場の上昇を監視していく姿勢が示されたことで、ユーロ/ドル相場はユーロ売りトレンドが続く可能性がある。
 注目は、18日未明に開かれる米FOMC。大方の投資家の予想では、現状維持見通しであるが、会合後のパウエルFRB議長のコメントが注目されている。3月4日にパウエルFRB議長は、米10年債利回りの上昇について、「無秩序な動きとも、FRBによる介入が必要とも考えていない。」とコメントして、米10年債利回りが、上昇する要因になったが、毎週木曜日に発表される、FRBの債券購入残高の推移をみると、2月4日〜3月3日までの1ヵ月間で購入した満期が2年〜30年までの米国債の累計額は856億ドル、インフレ連動債を9億ドルと、合計952億ドルを購入しており、1月から2月3日までの1ヵ月間よりも、154億ドルも多く購入していることが分かった(3月10日発表分も1週間で217億ドル購入)。その結果、FRBも実際は、10年国債をはじめ期間の長い国債の利回り上昇を、何とか抑え込もうと金融調節を行っていることがわかってきている。
そこで、18日未明の会合後のパウエルFRB議長がより踏み込んで、長期金利の上昇を望まないといったコメントが出れば、米10年債利回りの低下→ドル売り要因になる。
 一方で、3月4日と同様な「無秩序な動きとも、FRBによる介入が必要とも考えていない。」とコメントを繰り返せば、米10年債利回りが1.7%以上に上昇するリスクがある。(その場合は、ドル買い要因)
ドル/円相場とユーロ/ドル相場でのドル買いトレンドがいつまで続くのかを占ううえで、注目のイベントである。
 


10年国債利回りの上昇に対する米FRBとECB、RBA、日銀のスタンスの違い   2021/03/09(火)13:20:08  
   2月25日以降、米10年債利回りの上昇傾向と、欧州、豪州、日本の国債利回りも上昇傾向になっている。
米10年債利回りは、2月24日の終値ベースの利回りは、1.38%であったのが、3月5日には、1.625%まで上昇する場面があった。5日の終値ベースでは、1.566%で、1週間程度で0.186%も上昇している。
 欧州では、ドイツ10年債利回りは同様に、-0.304%であったのが、-0.21%をつける場面があったものの、5日の終値ベースでは-0.304%と乱高下しつつも同じ水準順になっている。フランス10年債利回りは、同様に-0.041%であったのが、-0.21%をつける場面があったものの、5日の終値ベースでは-0.055%に低下している。リーマンショック時に、国債の一部がデフォルトした、ギリシャの10年国債利回りは、同様に1.011%であったのが、1.139%をつける場面があったものの、5日の終値ベースでは0.966%になっている。現状では、世界一信用力の高いはずの米10年債利回りよりも、リーマンショック時にデフォルトしたギリシャ10年債利回りの方が低い。
欧州では国によってまちまちではあるが、総じて、米10年債り利回りのような急上昇はなく、うまく抑えられている。
 豪10年債利回りは、同様に、1.615%であったのが、1.871%をつける場面があったものの、5日の終値ベースでは1.783%と乱高下しつつも、1週間程度で0.168%も上昇している。
 日本の10年債利回りは、同様に、0.12%であったのが、0.155%をつける場面があったものの、5日の終値ベースでは0.08%と乱高下しつつも、1週間程度で0.04%上昇している。
 欧州と日本を除き、相対的に各10年債利回りは、上昇している。
これは、そもそも英国で、新型コロナウイルスのワクチン接種が進むなかで、景気回復期待が高まり、英10年債利回りが上昇し始めたのをきっかけに、米10年債利回りが上昇する流れになったことが始まりである。
 ただし、ここにきて上昇している米国と、低下している欧州、日本とは各中央銀行の政策スタンスで違いが出る結果になっている。
 というのも、米国では、2月23日、24日の米議会証言で、パウエルFRB議長が、最近の米10年債利回りの上昇は、景気の回復期待を反映したものであるとして、利回り上昇を容認する発言を行ったことが切っ掛けとなり、25日以降の急上昇につながっている。さらに、3月4日にもパウエルFRB議長は、「10年債利回りの上昇に注視しているが、無秩序な動きではなく、FRBの介入が必要だとは考えていない。現状のFRBのスタンスは適切である」と再度、利回り上昇を容認するコメントを出している結果、上昇している。
 一方、欧州では、3月2日にデギンドスECB(欧州中央銀行)副総裁が、「債券利回りの望ましくない上昇に対し、十分対応できる柔軟性をECBは持っている」とコメント。パネッタECB専務理事も「債券利回りの上昇を抑えるため、ECBは債権買い取理学の増額や、買取プログラムの拡大を積極的に行うべきだ」とコメントしており、米パウエルFRB議長よりも明らかに債券市場の利回り上昇をけん制する発言をしていることから、先週の欧州の国債利回りは低下する流れになっている。
 日本でも、5日に黒田日銀総裁が、国会での答弁で「(10年物国債をゼロ%程度に誘導する長期金利の)変動幅を拡大する必要があるとは考えていない」とコメントしたことで、利回りが低下している。
 豪州は、3年債利回りの利回り水準を政策目標にしているが、2月25日以降断続的に、国債の買い取り額を増額しており、明確に利回り低下を促す金融政策を行っている。にもかかわらず、利回り上昇を抑えきれていないという状況である。
 このように、米FRB以外は、明確に自国の10年物国債の利回り上昇を抑える金融政策スタンスをとっているのに、米国だけでが、利回り上昇を容認しているという差が利回りの動向に出ている。その結果、米ドルが直近の2週間は、多通貨に対し強い通貨になっている。
 今週は、米10年債利回りがどの程度まで上昇するのか、天井を探る展開になる。米国の物価指標の1つである、CPI(消費者物価指数)の2月分の発表が、3月10日に予定されている。事前予想では、前年比∔1.7%見通し(1月:1.4%)と大幅な上昇見通しである。5日には1.625%をつける場面があったが、2月のCPIが、1.7%を超えてくれば、米10年債利回りは、もう一段上の1.7%台を目指す可の可能性がある。(ドル買い要因)。反対に、CPIが上昇せずに低下すれば、米10年債利回りが低下し、ドル売り要因になる。
24日の米FOMCを控え、FRBメンバーやイエレン財務長官などから、こうした米国債利回りの上昇をけん制するコメントがでるか注目である。
 


日米欧の株式相場の急落を誘ったWTI原油先物価格動向と米10年債利回りの目先のめど   2021/03/02(火)09:14:39  
  WTI原油先物価格は、2月25日には年初来高値となる63.81ドルをつける場面があった。昨年の11月以降、原油先物価格が右肩上がり相場になっている。昨年10月30日の35ドル台から、わずか4か月間でおよそ1.8倍にもなっており、原油先物価格の上昇の要因は、新型コロナショックでの需要の大幅な落ち込みに対し、OPEC(石油輸出機構)にロシアなどの産油国が集まった、OPECプラスでの協議がうまくいっており、協調減産できていることが大きい。これに加えて、昨年12月から、ようやく新型コロナウイルスワクチンができ、英国で国民の約27%、米国で約19%、欧州ではまだ4%台であるが、ワクチン接種が進み始め、現状では感染防止効果がではじめており、世界景気の正常化が期待され、先行きの石油の需要増を見越した買いが、原油先物市場を押し上げている。また、米テキサス州の寒波で石油施設の約10%が休業となっていることも、買い要因になっている。
米国の移動手段は、自動車が主力であり、原油先物価格の上昇は、物価上昇を強く感じる1要因であり、4ヵ月で価格が約1.8倍になり、この先、景気がさらに良くなれば、もっと物価が上がるのではないかと感じるのは自然である。こうした物価上昇懸念が広がっており、26日に発表の米国のインフレ率の指標である1月のPCE価格指数は前年比∔1.5%に上昇。価格変動の大きい、食品とエネルギーを除くコアPEC価格指数も同∔1.5%に上昇しており、価格変動が大きい食品とエネルギーを除いても物価が上昇する兆しがある。
こうした生活感のなかで、23日と24日の議会証言で、パウエルFRB議長は、「金融政策では、政策金利はこれまで通り(2023年あたりまで)上げない」とはっきり言ったものの、一方で「最近の国債利回りの上昇は、金融市場が正常化しつつある動きであり、最近の物価上昇は一時的なもので、持続して(前年比∔2.0%となるような)FRBの目標の達成には3年程度かかりそうだ」という認識を示した。
債券の投資家としては、FRBは物価の上昇を注意深く見守っているので、適宜必要な対策をとるといった、コメントを期待していたのに、FRBは米国債利回りがまだ上昇しても放置するつもりだといった受け止められ方をされて、国債が売られる流れが加速している。25日は10年債利回りは、1.614%まで一気に上昇した。
利回り上昇から、26日にドル/円相場でドルが106.6円まで買われ、年初来高値を更新する場面があった。
なお、10年債利回りの急上昇を嫌気して、26日には日本、欧州、米国の株式相場が急落したことで、FOMCメンバでーあるアトランタ連銀のボスティック総裁は、米国債利回りの上昇について、水準としてはまだ低水準であるが、注視し続けるとコメントするなど、これ以上の急上昇をけん制する発言がみられている。今週は、FOMCメンバーやイエレン財務長官などから、こうした米国債利回りの上昇をけん制するコメントがでたり、WTI原油先物価格が下落すると、米10年利回りが低下し、ドル売り要因になる。
米10年債利回りは、WTI原油先物価格と同様に、昨年10月30日には0.877%であったのが、2月25日に一時、1.614%まで上昇しており、4ヵ月で約1.8倍の利回りになった。この金利上昇ペースが速いことも懸念されている。
 ただし、今後も石油先物価格が上昇を続けていくかは、難しい。世界的に石油生産の最も生産性が悪いとされる米国のシェールオイルでも、50ドル台が損益分岐点であり、60ドル台になると利益がでる水準であり、米国は、OPECプラスとは強調していない。60ドル台の価格が続けば、米国のシェールオイルが増産され、供給面で過剰感が出て、価格の下落が予想される。原油先物価格の上昇が、先行きの米国のインフレ上昇懸念を招いており、米10年債利回りの上昇要因の1つになっているので、WTI原油先物価格が下落するとインフレ懸念が和らぐ可能性がある。
 景気回復面では、ワクチン接種が進んでいる英国でも、都市封鎖の完全解除は6月の見通しで、飲食店や観光業などが完全正常化に向かうかどうかは、それ以降であり、感染動向次第である。
 米国では、自然免疫ができるとされる人口75%のワクチン接種が見込まれるのは、早くても、2022年初め頃とみられており、観光業や接客業の完全正常化はその先であり、まだ時間がかかりそうである。
 バイデン政権がまとめている1.9兆ドルの失業対策は今年の9月末までの分であり、完全正常化がまだ先になるならば、現在失業している人々の消費行動は慎重になる可能性がある。
従って、FRBは2023年あたりまで物価上昇が持続して2.0%を超える状況は難しいとみており、政策金利も2023年あたりまでゼロ金利の維持をコメントしていることから、一旦、足元の10年債利回りが低下する可能性が高いとみている。ワクチン接種の進捗と、具体的な規制解除が進む中で、雇用が充分に回復しないと、インフレ率の長期的な上昇はパウエルFRB議長が述べるような見通しになる可能性が高い。
では、米10年債利回りの目先の上昇めどはどのあたりになるのか。米国のインフレ率の指標である1月のPCE価格指数は前年比1.5%となっており、これを上回る水準である1.6%から1.7%あたりが目先の利回りのめどと分析している。25日に一時1.614%をつけたことから、これが目先の天井と意識されれば、1.2%台までゆっくり低下する可能性もある。
FOMCメンバーやイエレン財務長官などから、こうした米国債利回りの上昇をけん制するコメントに注目。
なお、米10年債利回りの低下は、ドル/円相場で、ドル売り要因になる。
 


WTI原油先物価格動向と米10年債利回りの目先のめど   2021/02/23(火)09:15:38  
  昨年の11月以降、原油先物価格が右肩上がり相場になっている。
WTI原油先物価格は、昨年10月30日の35ドル台から、先週の2月18日には、62.26ドルをつけており、およそ1.8倍にもなってきている。原油先物価格の上昇の要因は、新型コロナショックでの需要の大幅な落ち込みに対し、OPEC(石油輸出機構)にロシアなどの産油国が集まった、OPECプラスでの協議がうまくいっており、協調減産できていることが大きい。これに加えて、昨年12月から、ようやく新型コロナウイルスワクチンができ、英国や米国、欧州などでワクチン接種が開始され、現状ではおおむね感染防止効果がではじめており、世界景気の正常化が期待され、先行きの石油の需要増を見越した買いが、原油先物市場を押し上げているからである。
 ただし、今後も石油先物価格が上昇を続けていくかは、難しいとみている。というのも、世界的に石油生産の最も生産性が悪いとされる米国のシェールオイルでも、50ドル台が損益分岐点であり、60ドル台になると利益がでる水準であるからである。米国は、OPECプラスとは強調しておらず、最近の原油先物価格の上昇は、米国の物価の上昇要因になっている。コロナ禍で、接客業や観光業がまだまだ営業自粛を強いられている現状での物価上昇は好ましくない。米国の移動手段は、まだ自動車が主力であり、原油先物価格の上昇は、個人給付を手厚くしても、その経済の下支え効果をそぐ要因になる。原油先物価格の上昇が、先行きの米国のインフレ上昇懸念を招いており、米10年債利回りの上昇要因の1つになっているので、米国内で今後、積極的なシェールオイルの増産が始まれば、WTI原油先物価格が下落する可能性がある。
米10年債利回りは、2月15日以降は上昇基調が続き、ドル買い要因になっている。19日には1.363%まで上昇する場面があった。特に、1.9兆ドルのバイデン政権の財政政策の実施期待と、WTI原油先物の上昇傾向が続いていることで、米国のインフレ率の上昇懸念が重なり、米10年債利回りの上昇要因になっている。
ただし、米2年債利回りは、18日発表の前週分の新規失業保険件数が5週連続で80万件以上と高水準であることから、足元の米国の雇用市場の回復の鈍さを警戒して、安全資産が買われ、利回りは低下している。
では、10年債利回りの目先の上昇めどはどのあたりになるのか。米国のインフレ率の指標である1月のCPIは前年比+1.4%、12月のPCE価格指数は同1.3%となっており、これを上回る水準である1.4%から1.5%あたりが目先の利回りのめどになるとみている。今週ももう一段上昇する可能性が高まっており、ドル/円相場でのドル買い要因になる。
 

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