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ストラテジー(世界情勢と投資戦略)

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欧州の景気回復見通しとECB政策対応とユーロ相場見通しと株式投資戦略   2021/06/15(火)07:25:51  
   6月10日に開かれたECB金融政策理事会では、現状維持が決定。
理事会後の会見でラガルドECB総裁は「欧州の景気は第2四半期に力強さがみられ、第3四半期に増幅されるだろう。3ヵ月前に比べると先行きの見通しはやや楽観的になっている。ただし、米国とユーロ圏の経済情勢は大きく違う。各々の回復局面では異なる地点にいる。そのことで、ユーロ圏内でもインフレ率に差が出てきている。例えば、ドイツのインフレ率はユーロ圏全体のものよりも高めになるだろう。しかし、サービス価格の大きな上昇は見られていない。理由は、賃金が大幅に上昇していないからだとみている。さらなる上昇を期待している。2021年を通しての物価上昇は1.9%と前回予想よりも高くなっているが、ECBの目標(概ね2.0%)以下にとどまる見通し。PEPP(パンデミック緊急購入プログラム)に基づく国債買い入れペースについては異なる意見があった。ただし、購入額の規模は、ここで縮小すると企業の借り入れコストの上昇につながるリスクがあり、景気回復の足を引っ張るリスクがあると判断し、4-6月と同じく増額ぺース(週間で約190億ユーロ)を維持する。出口戦略については、いずれ議論されることになるが、現時点では議論の開始自体、時期尚早である。主要な論点ではおおむね全会一致の合意である」という主旨でコメント。この決定を受けて、ドイツ国債などユーロ圏の国債が買われ、欧州の国債利回りが低下。ユーロ/ドル相場、ユーロ/円相場ではユーロが売られる流れになっている。
 ECBは先行きのユーロ圏経済の見通しを、2021年:4.6%(前回見通し:4.0%)、2022年:4.7%(前回見通し:4.1%)に上方修正しており、2年連続で4%台の高い成長を見込んでいる。物価見通しについては、2021年:1.9%(前回見通し:1.5%)、2022年:1.5%(前回見通し:1.2%)とやや上方修正しているものの、ECBの目標である%程度にはまだ届かないという見通しになっている。
 ラガルドECB総裁がコメントしているように、米国と欧州では景気回復度合いが違う。米国は雇用面でかなり回復度合いが早まっているが、欧州ではようやく経済の再開が始まりつつある段階で、雇用の回復はまだ加速していない。さらに、米国のような大規模な景気対策ではないことから、ユーロ圏のインフレ率見通しは、ECB見通しに沿った動きで推移する可能性がある。
米国が物価上昇が加速し、米10年債利回りの上昇につながれば、ドルが上昇しやすい地合いになる。次に、ユーロ圏の景気回復に伴って、ユーロが買われやすい地合いが続く見通しである。一方、日本はまずはワクチン接種率を早急に進め、東京オリンピック・パラリンピックの成功につなげつつ、景気回復のスピードが速まる見通しであり、足元ではフェンダメンタルズ面で日本、円の弱さが目立つ。
 ドル ≧ ユーロ ≧ 円 という関係で、ドル/円相場では、ドル買い傾向が続き、ユーロ/円相場では、ユーロ買い傾向が続く可能性があると分析している。株式相場は、物価上昇が見込まれつつ、実質金利(米10年債利回り-米10年BEI利回り)が▲0.8%程度で安定している間は、上昇が続く可能性が高いものの、実質金利が0%以上プラス圏になってくると、急落リスクが高まる。引き続き、米10年債利回りの動向、物価動向、FRBの政策スタンスが変化する可能性のある8月あたりまでは、目が離せない状況である。こうした下落リスクの高い相場環境では、仮に一時的に相場が下落しても、比較的短期間で株価が戻りやすい、好業績で、配当金を増額傾向であり、配当利回りが4%程度ある好業績銘柄へのシフトが1つのお勧め対策である。
 


米地区連銀経済報告からみる米国の物価見通しとFRBの今後の政策対応見通し   2021/06/08(火)07:18:52  
   6月3日未明に発表されたFRBの地区連銀経済報告(通称、ベージュブック)では、「ワクチン接種率の向上に伴って、観光やレストランなどの接客業への個人支出が増加傾向になってきており、食品サービス、小売業などで雇用は緩やかな改善が続いている。低賃金の時給労働者、トラック運転手、熟練工などの人手不足が目立ち、価格上昇につながってきている。製造業、建設業、運送業といった企業はこういったコスト上昇を価格転嫁できており、物価は上昇し、今後数ヵ月でより上昇する見通しである」という主旨でまとめられた。
 このベージュブックは6月15日・16日のFOMCでの米国景気の基礎資料になるので、雇用の回復傾向と物価上昇の広がりから、米国の物価上昇が広がる可能性がでてきている。賃金面ではまだ大きな動きになっていないので利上げはまだ先というのが、FRBの主張だが、国債を運用する債券投資家にとっては、物価が上昇傾向になることから、これから利回りが低下するのではなく、米国債利回りは上昇基調になる(債券は売られやすい)見通しである。10日に発表される米5月CPI(消費者物価指数)は前年比+4.7%見通し(4月:+4.2%)とさらに加速する見通しである。FRBの金融政策の変更の手段としては、まずは量的金融緩和策 (現状は、毎月国債等月額800億ドル。住宅ローン担保証券等400億ドルを購入)の規模の縮小から始め、次に政策金利の引き上げ時期を探るという順序が過去の政策順序である。
 今後、FRBの政策対応の予想と、米国株式相場、日本の株式相場、為替相場見通しについて、2つのケースを想定している。
 ケース1は、8月あたりに年内の10月から12月のうちに、量的金融緩和策のテーパリングから始めるとアナウンスして、来年2022年中に政策金利の引き上げ時期を探るというシナリオ。
テーパリングの開始は、FRBによる米国債の購入を減額する、いわゆる大口の購入者が購入量を減らしていく一方、バイデン政権の財政政策で米国債の発行量は増えるので、米国債利回りの上昇要因になる。従って、仮にテーパリング開始を8月にパウエルFRB議長が表明する場合、発表した時点から、米国債利回りの上昇が始まる見通し。どの程度まで上昇するのかは、やはりPCE価格指数の上昇度合いをみながらになる。従って、このあたりに日米の株式相場の一時的な下落リスクがある。しかし、米国もここで景気を悪化させたいとは考えていないので、ワクチン接種がさらに進んで、コロナショックからのほぼ回復までは、財政政策などを続けていく見通しなので、株式相場も一時的な下落から立ち直り、その後はさらに上値を追う展開になるというシナリオである。利回りの上昇は、ドル買い要因になる。
 ケース2は、これまで同様、FRBは足元の物価上昇は一時的で、今後数ヵ月物価動向を注視する。テーパリングの議論開始時期の議論はまだ先の話だと、これまでのFRBの政策スタンスを継続するというシナリオ。この場合、債券投資家、株式投資家は、FRBの物価見通しが間違っていると解釈し、米国債利回りの急激な上昇リスクがあり、かつ、米国株式相場の急落リスクが高まる。従って、米国債利回りの動向に特に注目度が高まる見通し。ケース1よりも、株式相場の乱高下幅が大きくなるリスクがある。
ただし、このケース2でも、FRBの低金利政策自体は継続する見通しであり、米国景気は回復を続けることから、ドル/円相場ではドル買い傾向が続く見通しである。
 


見方が分かれてきた米物価の先行見通しと今後の政策対応   2021/06/01(火)08:18:37  
   5月28日に発表された米4月のPCE価格指数は前年比∔3.6%(3月:2.4%)と事前予想の2.9%よりも急上昇し、4ヵ月連続で上昇傾向になっている。価格変動の大きい、食品・エネルギー除くコアPCE価格指数も前年比+3.1%(3月:+1.9%)と大幅上昇しており、FRBの物価見通しの信頼感が揺らぎつつある。
ただし、28日の米10年債相場は、12日の4月のCPI発表時のような国債売りの大きな動きにはならず、週末28日の終値ベースで、利回りは1.582%に低下している。
 米国の物価見通しについては、複数の見方に分かれてきている。
 パウエルFRB議長をはじめ現在のFRBメンバーは、従来通り、足元の物価上昇は一時的で、やがて低下するとしており、利上げ開始時期の検討は、数ヵ月のデータで示された後に、テーパリング(量的金融緩和縮小)の開始時期について議論を開始するかどうか検討するので、利上げはまだ行わないという姿勢を続けている。ただし、クォールズFRB副議長は8月あたりまで4%程度の水準が続く場合は、テーパリング議論を開始する可能性も匂わせている。
 前FRB議長のイエレン米財務長官は、27日に「最近の物価上昇は一時的であり、物価が高止まりするような動きではない。しかし、年末あたりまでは高止まりする可能性がある」と、物価動向に警戒する姿勢である。イエレン財務長官の見方が正しい場合、FRBはやはり8月あたりには、テーパリング開始時期についての議論を行う可能性が高まっている。
 クリントン政権時の財務長官であったサマーズ元財務長官は、住宅市場や半導体市場では材料費の上昇など供給面での理由から住宅価格や半導体価格が上昇しており、なおかつ、バイデン政権では、最低賃金を引き上げようとしている。これは明らかな物価上昇圧力につながるので、インフレ率の数ヵ月間の実際のデータの推移を見てから議論を開始するのでは遅い。FRBが政策金利を引き上げはじめても、実際に経済に抑制効果が表れるのは、1年から18ヵ月かかる。例えばパーティの参加者が全員酔っぱらってから、酒の飲みすぎを指摘して酒を取り上げるのでは遅い。パーティの参加者が泥酔する前に、酒を取り上げるべきだろうといった主旨を述べており、特に住宅市場を支えているMBS(住宅ローン担保証券)等の毎月の買い入れ策の早期停止などはありうるしている。
 ここにきて、サマーズ元財務長官のコメントが注目されてきている。確かに、コロナ禍で郊外に引っ越しするニーズが強く、低金利と重なって、材木価格と建設関係の人手不足が重なり、供給面からの住宅価格高騰が目立ち、3月のケースシラー総合20都市住宅価格指数は、前年比+13.27%(2月:12.0%)も上昇。9ヵ月連続で上昇率が上昇しており過熱感がある。半導体も供給面の不足から価格が上昇しており、しばらくは供給不足が続く見通しで、価格が上昇していることからすれば、サマーズ元財務長官の見方が的を得ている。
 今週は3日未明のFRBの地区連銀経済報告(通称、ベージュブック)が発表されるので、 4月のコアPCE価格指数も前年比∔3.1%に急上昇する中で、米国全体としての物価動向と雇用の改善動向が注目。次回6月15日・16日に開かれるFOMCで物価動向と雇用市場の見方にこれまでと違う変化が起きて、早期のテーパリング開始や利上げになりそうかどうかが注目である。早期利上げ見通しが高まれば、米10年債利回りが上昇し、ドル買い要因になる。株式相場にとっては、利上げ時期の前倒しとインフレ率の上昇は株価下落要因になる。
 イランとの6か国協議の進展期待による原油価格の動向や、バイデン大統領のジョブズプランの減額や最低賃金対応など、米国の物価をめぐるかじ取りが想定以上に難しい局面になりつつある。
 


米インフレ圧力の低下につながる、イランの6ヵ国協議復帰   2021/05/25(火)08:12:28  
   5月18日から、イランと米欧との核協議復帰に向けた動きがあわただしくなってきている。イランでは6月18日にイランの大統領選挙を控えており、米欧との対話の扉を開け、穏健派とされるロウハニ現大統領の再選を支援するため、米欧とイランとの核合意復帰に向けた合意がまとまろうとしており、先週はイラン産原油輸出の再開を見越した原油価格の下落がみられる。20日にはイランのロウハニ大統領自身が、米欧がイランの石油や船舶部門、中銀などに対する制裁を解除する可能性を示唆。WTI原油先物価格は、下落する動きになった。WTI原油先物価格は18日には、67.01ドルをつけていたが、イランの動きが伝わると、下落傾向となり、21日には61.56ドルまで低下する場面があった。インドがすでにイラン産原油の輸入再開に向けた準備を進めていることも伝わっている。
 世界の金融市場では、5月12日に発表された米4月のCPI(消費者物価指数)が前年比∔4.2%(3月:2.6%)上昇し、米国のインフレ懸念が広がり、FRBの早期利上げを警戒する動きが広がりつつある。4月のCPIの内訳をみると、ガソリン価格が+49.6%、燃料価格が+37.3%、中古車とトラックが∔21.0%と大幅上昇している。特にガソリンや燃料価格の上昇が物価を大きく押し上げている要因の1つである。
 トランプ政権がつぶしたイランとの対話関係をバイデン大統領が再構築させる努力をしているのだが、イラン対策は同時に米国の物価上昇圧力を弱める効果があるので、実際に米国、独、仏、英国、中国、ロシアとイランとの6か国協議が再開されれば、世界的に見てイランが市場復帰し、原油輸出量が増加する分、原油価格のさらなる低下が期待できる。
 18日に公表された4月の米FOMCの議事要旨では、複数のメンバーが、米国の景気回復が想定以上で進む可能性があるとして、資産購入ペースについての議論をどこかの会合で議論した方がよいとする意見が出ていたこと分かった。現在のFRBのメンバーは、今後数ヵ月の物価関係のデータを見てから判断するとしており、これまで想定されていた2023年の利上げ開始よりも物価動向をにらみつつ、前倒しで債券購入額の減額(テーパリング)開始時期をにらむムードに変わりつつあるが、イランとの6か国協議再開の動きは、再び米国の物価上昇圧力を低下させ、テーパリング開始時期の先延ばしと、利上げ開始時期の先送りにつながる可能性が出てきた。
 ちなみに、米CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)が提供しているFedWatchツールでは、2021年12月のFOMCでの政策金利引き上げを93%織り込んでいる。
 8月頃までの米経済指標の推移がこれまで以上に注目されやすいのは変わらないものの、原油価格の上昇が安定してくると、物価上昇ペースが落ち着く可能性もあるので、イランの原油輸出再開が始まるかどうか、新たに注目である。
 バイデン米大統領は、21日に8年間で約2兆ドル(約216兆円)の国内のインフラ投資策による雇用創出策である「ジョブズプラン」の規模を減額し1.8兆ドル(約196兆円)で共和党に再提案しており、足元の物価が急上昇する要因をやわらげ始めている点に注目である。米国債利回りは、物価がどの程度まで上昇し、落ち着くのかを見極めつつ、上昇傾向になる見通しであるが、上昇ペースが落ち着くと、ドル/円相場ではドル売り・円買い要因になりやすい。28日には米4月PCE価格指数の発表があり、事前予想では前年比∔2.9%見通し(一時的に、FRBの政策目標である+2.0%を超える)であり、3.0%以上になると、米10年債利回りの一段の上昇要因になりやすい。引き続き米10年債利回りの落ち着きどころを探りつつ、ドル円相場が推移する展開が続く見通しである。なお、米国株式相場にとって、米10年債利回りの上昇が止まって安定する動きになることは、株価の上昇要因になる。
 


米CPI急上昇で、再燃したFRBの早期利上げ観測と金融市場の反応   2021/05/18(火)08:24:07  
   5月12日に発表された米4月のCPI(消費者物価指数)が前年比∔4.2%(3月:2.6%)と事前予想の3.6%をも大きく上回り、想定以上に上昇していることから、再びFRBによる政策金利の早期引上げ見通しが強まり、5月2日の週には1.4%台にまで低下していた米10年債利回りが1.7%台に大きく上昇する動きになった。
 13日発表の4月のPPI(生産者物価指数)も前年比+6.2%(3月:4.2)に大幅上昇し、10年債利回りがさらに上昇し、13日には一時、1.705%をつける場面があった。
 ウォラーFRB理事は13日に、パウエルFRB議長がこれまで繰り返し述べているように物価の上昇は一時的であるという見解を示したうえで、「物価の上昇は向こう2年間で、2.2〜2.5%の間で推移する見通しである。近年のさえない伸びを補うために高めのインフレ率を容認するというFRBの方針に沿った動きになる見通しである。今回のCPIの上昇は全ての専門家にショックを与えた。一時的なデータのサプライズに惑わされるのではなく、忍耐強く、冷静な目を持つ必要がある。政策スタンスの変更を検討する前に、そのことをまず確認しなければならない。物価上昇が数ヵ月にわたって、4%になるようであれば、懸念材料になる」とコメント。FRBは今後数ヵ月のCPIやPCE価格指数の推移を丁寧に検証しながら、政策スタンスの変更をすべきか検討する姿勢を示している。
ちなみに、14日現在のFF金利先物から予想される利上げ時期は2023年1月以降100%織り込まれている。別の予測である米CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)が提供しているFedWatchツールでは、2021年12月のFOMCでの政策金利引き上げを90%織り込み始めた。金融市場では、FRBが示す2023年末以降の利上げ開始ではなく、早ければ年内の利上げ開始もありうるとの見方になっているのが特徴である。FRBが物価予測を読み間違えているかもしれないという心理状態である。
 このような金融政策を担うFRBと、金融市場参加者との認識の温度差がある時は、FRBが市場との対話がうまいいっていない(対話の失敗)とされる。どちらが正しいのかということは、ウォラーFRB理事や他のFOMCメンバーが述べているように、今後発表される物価と雇用のデータ次第であるが、もし年内利上げ開始になると、好調な米住宅市場の減少要因につながるので、米国景気の先行き見通しに大きな変化が起きる。従って、8月頃までの米経済指標の推移がこれまで以上に注目されやすく、為替相場や債券市場、株式市場を大きく揺さぶるリスクが出てきた。
 バイデン米大統領は、12日に共和党のマコネル上院院内総務とマッカーシー下院院内総務と、バイデン大統領が進める、8年間で約2兆ドル(約216兆円)の国内のインフラ投資策による雇用創出策である「ジョブズプラン」と、10年間で約1.8兆ドル(約194兆円)の教育や子育てなどの支援策となる「ファミリープラン」について会談した。バイデン大統領は、道路、橋、ブロードバンドなどのインフラについて、超党派合意を得たい述べて、増税については法人税の28%案よりも低くする可能性も示唆し、年収40万ドル(約4360万円)以下の国民には増税は行わないと明言した。マコネル上院院内総務とマッカーシー下院院内総務は計画案については一緒に取り組む姿勢を示しつつ、増税ほど最悪なものはないとして、増税については超えられない一線だとしている。バイデン大統領はインフラ投資においては、米国内での競争ではなく、他国(中国を想定)との競争であるとして、実現に国民の理解を求めていることから、共和党からの支持が得られなくても、対中国との競争を勝ち抜くインフラを整備するために、民主党単独での法案を可決させる意思を示している。従って、足元の物価が上昇傾向にあるかどうかに関係なく、追加刺激策を行う可能性が高い。
 5月4日にイエレン米財務長官(前FRB議長)が「米政府が財政支出を拡大し、米国経済が成長を加速させると、(長期)金利は上昇する可能性が高い。米経済が過熱しないように確実にするためには、(政策)金利は小幅に上昇せざるを得ないかもしれない」と発言したことが、現実化するリスクが高まりつつある。
ただし、為替相場に限っては、ドル買い要因であるので、特に新型コロナショックからの立ち直りが遅れている日本とのドル/円相場で見れば、少なくとも、米国の物価動向の見極め期間となる8月あたりまでドル買い・円売り傾向がしばらく続く可能性がある。
 米国債利回りは、物価がどの程度まで上昇し、落ち着くのかを見極めつつ、上昇傾向になる見通しである。あるいは、FRBが利回りの上昇を抑えるために、国債の購入額を追加し利回りの上昇を抑えようと動く可能性もある。トランプ前大統領が一時、高騰する原油先物価格を抑えようと、サウジアラビアやロシアに促したような物価上昇の芽を摘む政策をバイデン政権もとる可能性もあるので、バイデン政権が物価抑制策を何もしないとは考えにくい。
 ということで、米株式相場は実際の物価上昇や、米国債利回りの水準次第でまだまだ上昇相場が続くのか、一時的な下落局面を迎えるのかの別れ目を迎える可能性がでてきている。
 


あなどれない!前FRB議長と現在のFRBメンバーの先行き見通しの差   2021/05/11(火)08:17:54  
   5月4日のイエレン米財務長官(前FRB議長)のテレビインタビューが流れた後、米国の株式市場が一時動揺する場面があった。
 イエレン財務長官は「米政府が財政支出(8年間で約2兆ドル(約216兆円)国内のインフラ投資策による雇用創出策である「ジョブズプラン」に加え、10年間で約1.8兆ドル(約194兆円)の教育や子育てなどの支援策となる「ファミリープラン」)を拡大し、米国経済が成長を加速させると、(長期)金利は上昇する可能性が高い。米経済が過熱しないように確実にするためには、(政策)金利は小幅に上昇せざるを得ないかもしれない」と発言。これが、政策金利の早期引き上げにつながるかもしれないとして、発言後は金融市場でやや警戒ムードがでている。
というのも、5月12日発表される4月CPI(消費者物価指数)、13日のPPI(消費者物価指数)は大幅上昇見通しとなっており、治まりかけたFRBによる早期利上げ懸念を再燃させかねないからだ。
 わかりやすく説明すると、昨年のコロナショック前後は、CPIは、2020年2月:前年比+2.4%、2020年3月:前年比+2.1%、2020年4月:前年比+1.4%で推移していた。FRBの物価目標の指標であるPCE価格指数では、2020年2月:前年比+1.8%、2020年3月:前年比+1.3%、2020年4月:前年比+0.5%で推移。昨年の3月以降は米国で新型コロナ感染が深刻化するなかで、物価が急速に低下していた時期にあたる。FRBの物価目標は現在、安定的に∔2.0%であるので、PCE価格指数に比べるとCPIの方が数値が高めに出る傾向があるのだが、12日に発表される2021年4月CPIは+3.6%見通しであり、13日に発表される2021年4月PPIは、+5.8%見通しと、昨年低下していた反動で、今年は上昇しやすいという要因が重なって、大幅な上昇見通しになっているのである。
 4月28日のFOMC後の会見で、パウエルFRB議長は、「物価の指標としているPCE価格指数は一時的に(目標である前年比+2.0%を)超えるけれども、米国経済は雇用と物価の両面で目標からは程遠く、目標の達成までにはしばらく時間がかかる。労働市場で失業者が多い状況ではインフレ率が持続的に上昇する可能性は低い。新型コロナウイルスの感染拡大が収束し、米国民が経済を以前のように再開せても安全だと感じるまで、米国経済の完全回復はありえない。ワクチン接種が進み、著しい進展があるまで、引き続き金融緩和策を維持していく」とこれまで同様、足元の物価の上昇は一時的で利上げはまだまだ先だとコメントしている。
 失業者の指標の1つである新規失業保険申請件数でみると、コロナショック前の2020年3月9日の週では28万2000件で、直近の2021年4月26日の週の49万8000件と比べると、1.8倍程度も失業者が多いので、パウエルFRB議長が言うように、労働市場はまだ目標からは程遠く、目標の達成までにはしばらく時間がかかりそう。労働市場で失業者が多い状況ではインフレ率が持続的に上昇する可能性は低い。しかし、前FRB議長であるイエレン財務長官の見方では、バイデン政権の新たな2つの財政政策は、景気のさらなる上昇を後押しするので、通過すれば想定よりも利上げを早く行わなければならない気がするという主旨であるので、こういった見方も正しい可能性がある。
 なお、イエレン財務長官の4日の発言後は、現在の複数のFRBメンバーが、パウエルFRB議長と同様の発言を繰り返しており、現役FRBメンバーとFRBの大物OBとの見方には差がある。インフレ率の早期上昇懸念は、米10年債利回りの上昇要因であり、政策金利の引き上げ要因でもあるので、ドル買い要因になる。
実際、市場参加者は、パウエルFRB議長の見方に同調するか、イエレン財務長官に同調するのか、12日以降にわかってくるが、イエレン財務長官の見通しに同調する市場参加者が多くいれば、好調な米株式相場の波乱要因になるので、ドル相場、米国債相場、株式相場のそれぞれで重要な注目イベントになる。
 


危機対応で差がついてきた米英と日欧の国力差   2021/04/27(火)08:48:43  
   新型コロナウイルスの感染拡大から、克服していく過程で、ここにきて米英と日欧の先進国間での差が鮮明になりつつある。米国と英国がいち早く感染拡大を乗り越えようとしているの対し、日欧はまだ感染被害が拡大中であり、まだ感染拡大をコントロールできていない。
 米国も英国も感染被害が甚大で、感染が広がる過程では、有効な対策を打てていなかった点は共通するものの、感染からの脱却局面では、世界に先駆けた独時の取り組みが成功し、その成果が明らかになりつつある。
米国は、感染者、死者とも現時点では世界最大になっているものの、ワクチン開発にあたって、いち早く当時のトランプ大統領が「ワープスピード作戦」と名付けて、新薬開発から承認までの期間を1年以内に短縮させる下地を作り、100億ドル(約1兆800億円)という大きな予算を用意して、創薬企業の資金面での支援を整え、さらに創薬企業には最先端技術を開発している企業(モデルナ社、ビオンテック社など)に光を当てて開発に取り組んだことが、早期のワクチン開発につながり、大きな成功につながっている。その際に、開発されたワクチンの早期使用する契約を取り付けたことは、感染からの脱却面で米国民にいち早い恩恵になり、早期の克服につながりつつある。また、経済的な混乱を回避するために、かつてない規模での個人給付の実施や手厚い失業給付の点でも、大きな社会的な混乱を回避することに成功している。
 また、ワクチン接種にあたっては、優先順序をつけながらも、予約に来なかった人で、余るワクチンについては、病院側の判断で、窓口に並ぶ本来ならワクチン接種の順番ではないものの、家族に高齢者や子供たちを抱えて、ワクチン接種を早く希望する国民にも接種を認めるという柔軟な対応もうまくいっている。24日時点のワクチン接種率は、全国民の41%になっている。
 英国でも、感染被害自体は、世界第5位で甚大ながらも、ワクチンの確保という点では、ユーロ圏からの離脱を交渉しつつ、独自で動き、適正価格よりも早期数量確保を優先した。さらに、新型コロナウイルスのワクチン接種を進めるために、看護師資格がなくても一定の学歴と犯罪歴のない約3万人のボランティアを募集し、約10時間のオンライン研修と模擬注射研修を受けた後に合格させて、国民の自宅から半径16匏内に注射できる接種会場を設定することで、ワクチンの接種率を早める効果が上がっている要因となっている。ワクチン接種率が英国民の約65%を超えてきたことで、感染がひどかった首都ロンドンでは、12日からパブやレストランの屋外営業が再開され、マスクなしで通行する人の方が多くなるくらいワクチン接種の感染防止策が効果を上げている。こういった高度な政治判断が今評価され、英国の中では、ジョンソン政権の支持率は3月時点で50%以上となっている。
 欧州のドイツでは、ファイザー社と共同開発企業のビオンテック社が国内企業ながら、ワクチンの調達にあたっては、ドイツ単独で動くと欧州圏内のまとまりを崩すリスクを回避するために、交渉担当をEUに一本化した結果、現状も感染拡大がひどくなっている状態で、ドイツ国民からメルケル政権に対する不満が高まっている状況である。
 そのEUでは、ワクチンの確保にあたっては、適正価格を優先し、初期の発注量を抑えたことで、製薬企業が全体の受注量を基に、生産工場を計画したために、今年に入って各国からの注文が急増し、生産工場を慌てて増やすことで供給が遅れがちになる要因につながっており、欧州域内の国民からは、対応や判断のまずさを指摘されている。
 日本では、4月22日現在で、ワクチン接種率は全国民の2%であり、医療従事者でもまだ接種が完了しておらず、高齢者への接種が始まったばかりで、高齢者については、まだ2回目の接種を受けた人がいない状況。菅総理は16日の日米首脳会談で訪米中に、ファイザー社とのトップ交渉で、9月中に日本の全国民分のワクチンの供給を確保したとされるが、山間地などが多い日本では、厚生労働省は既存の医療機関約35900等と集団接種会場約1480ヵ所、特設会場が約4000会場を用意する計画だが、英国同様に注射を打てる人材不足から、医師と看護婦のみで対応するとすれば、実務的な制約から、来年春先までワクチン接種が完了しないとの試算もあるほどである。こういったパンデミックな危機の際には、英国のワクチンボランティアなどのような柔軟な対応も必要であると思われる。これらの実行にあたっては、政治リスクが伴うものの、米国も英国もそれは同じである中で、こうしてリーダーシップを発揮している点では、国民からの信頼度に差がついている感じがする。
IMF(国際通貨基金)は、4月5日に最新の「世界経済見通し」を公表。米国は2021年中にコロナ前よりも景気が拡大する見通し、英国、欧州、日本はコロナショック前の水準に戻るのは、2022年と予想しているものの、2022年の成長見通しによると、英国は5.1%、欧州は3.8%に対し、日本は2.5%ととりわけ日本が低いのが特徴である。中長期的に日本の国力の低下が見込まれつつあり、いずれかの時点で、為替相場では悪い円安に進む可能性がある。日本にはコロナショックからの脱却を切っ掛けにした、新たな成長戦略が求められている。
 


日米首脳会談で見えてきた日米の対中戦略と米バイデン政権のドル高戦略   2021/04/20(火)08:21:08  
   4月16日に米国で開かれた日米首脳会談は、バイデン新大統領が1月に就任して、初めて直接、対面で対話する海外の総理という点でも、バイデン政権が日本へ求める期待の強さを感じる会談となった。
 今回の最大のポイントは、対中国に対し、日米で武力衝突に備えた準備をしていくことを確認した点。特に、米国は今回の共同声明文の中で、「米国は、核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日米安全保障条約の下での日本の防衛に対するゆるぎない支持をあらためて表明した。米国はまた、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適応されることを再確認した。日米両国は尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する。日米両国は、困難を増す安全保障環境に即して、抑止力及び対処力を強化すること、サイバー及び宇宙を含むすべての領域を横断する防衛協力を進化させること、そして、拡大抑止を強化することにコミットメントした」と明記している。想定相手国は明らかに中国である。
人的なつながりが日米友情の基盤となっているとしたうえで、今後の日米協力を深化させる分野として、生命科学及びバイオテクノロジー、人工知能(AI)、量子科学、民生宇宙分野の研究及び技術開発をはじめ、第 5 世代無線ネットワーク(5G)の安全性及び開放性、気候変動対策などを重点的に共同で強化していくことに合意した。
 上記の合意を達成していくためには、日本の民間企業の協力なしでは、達成不可能であり、軍事力では三菱重工業や、川崎重工業など、5G関連は、日立、NEC、東芝など、AIではソニーグループや富士通などのビジネスチャンスが広がる可能性が高まっている。特にバイデン政権は、トランプ前政権とは違って、米国の貿易赤字問題には触れず、日本だけでなく欧州などの同盟国との連携強化を図る方針であるのが特徴である。従って、技術力と価格的に魅力的な製品の日本からの輸出増につながる可能性が高まっている。
米国からみれば、中期的に輸入品が増える場合に、ドル安よりもドル高である方が都合がいい。米国も巨額の財政赤字をさらに拡大させるのではなく、秩序だった財政のコントロールを目指すことが予想され、中期的にはドル高政策が予想される。
 足元の為替相場は、まだまだコロナ禍での景気正常化を見据えた動きが続いており、米10年債利回りの動向が主要な変動要因になっているが、政治的な対中戦略が動き出しモノの移動に具体的に表われるようになり、米10年債利回りが落ち着いてくると、ワクチン接種率の差による経済の全面正常化時期の見通しの差や、新たな国際秩序へ向けた要因が、為替相場の材料になりやすい。新型コロナウイルスの沈静化、日欧との同盟関係の深堀りなど米国のリーダーシップが意識されやすく、ドル/円相場とユーロ/ドル相場でのドル買いトレンドが続く可能性がある。
 


IMF(国際通貨基金)の最新世界経済見通しとワクチン接種率と今後の景気回復スピード比較   2021/04/13(火)10:34:09  
   4月6日にIMF(国際通貨基金)が最新の「世界経済見通し(World Economic Outlook)」を発表した。新型コロナウイルス感染がまだ拡大している中で、各国の立場の違いによる「広がる復興格差 回復を進める」をテーマに、世界経済の回復度合いを分析している。
 世界経済全体としては、米国がバイデン政権誕生後に、3月に成立させた約1.9兆ドル(約220兆円)の経済対策が、米国だけでなく世界GDP成長率の押し上げ要因になるとして、2021年を6.0%、2022年は4.4%成長見通しとしている。
 2021年は米国が先進国の中で、唯一コロナ前の経済規模を超える成長になるとし、米国自体は6.4%見通しとしている。中国は2020年にすでにコロナ感染前の経済規模を上回って成長しており、2021年のGDPは8.4%見通しとしており、中国の全人代が2021年の見通しとしている6.0%以上としている目標を大きく上回る成長を予測している。一方で、欧州や日本などは、コロナ前の経済規模に戻るのは、2022年と見通しており、コロナ感染が続く間は、経済の低迷が続き、ワクチン接種の進展度合いが大きく景気回復度合いを左右するとしている。ユーロ圏の2021年見通しは、4.4%、2022年は3.8%としている。日本については、2021年見通しは、3.3%、2022年は2.5%としている。
 こうした世界経済の回復は、2021年後半にワクチン接種効果による景気回復を前提にしており、特に強い悪影響を受けている観光業や農産業の一次産品を輸出している国々の景気回復はGDPの損失が大きくなると指摘している。特に充分な財政政策を打ち出せない国々にとっては、先進国による景気回復につれて、金利が上昇すると債務返済の困難さが高まる問題もあり、先進国は金利の上昇には、世界情勢を勘案して慎重にするように求めている。世界全体では、2020年に貧困層に分類される所得の水準の人口が9500万人も増加しており、長期的な経済の後遺症が残るのを避けるために、対応策をとるように提言している。ただし、経済の後遺症としては、各国政府の積極的な財政政策の効果から、2008年のリーマンショックよりも、少なくて済みそうだとしている。一方で、低所得国や新興国はワクチンの確保や経済対策が充分に整えることができずに、コロナ後の回復に深い傷となるリスクを指摘している。
 新型コロナウイルスのワクチン接種率を比較すると、米国では人口の35.3%にあたる1億1714万2879名が1回以上の接種を受けている。日本では、人口の1.2%にあたる159万2517名しか1回以上の接種を受けていない。ワクチン接種率はG7先進国の中では最も低い。欧州の新型コロナウイルスのワクチン接種は、ドイツ、フランス、イタリアで約17%以下とワクチン接種率が低く、遅れている。英国は、新型コロナウイルスのワクチン接種率が人口の約47%まで進んできており、7月末までには全成人についてワクチン接種を完了させるとしている。
足もとの為替相場は、米国の10年債利回りの動向が主要な変動要因になっているが、利回りが落ち着いてくると、こうしたワクチン接種率の差による経済の全面正常化時期の見通しの差が、為替相場の材料になりやすい。新型コロナウイルスの沈静化においても、米国の回復スピードの速さが意識されやすく、ドル/円相場とユーロ/ドル相場でのドル買いトレンドがしばらく続く可能性が高まっている。
 


米バイデン政権の2兆ドルのインフラ投資戦略と世界戦略   2021/04/06(火)08:33:10  
  バイデン米大統領は、3月に成立させた約1.9兆ドル(約209兆円)の追加経済対策に続き、間髪を入れずに、31日には、約2兆ドル(約220兆円)の橋や鉄道などのインフラ投資を行う経済対策案を発表した。
1.9兆ドルの経済対策の財源は主に米国債の発行で補うことが予想されていることから、米10年債を含めた長期の国債利回りの大幅な上昇要因になったものの、今回は、共和党との協議を経て修正される可能性もあり、財源の一部を増税で示したことから、米10年債を含めた長期の国債利回りの大幅な上昇要因にはまだなっていない点が特徴である。
 1.9兆ドルの経済対策は、個人への給付金や中小企業対策など、本年度中に執行されることが念頭に打ち出された対策であるのに対し、インフラ投資案の方は、規模では2兆ドルと巨額であるものの、8年間での対策となっており、年平均でみれば、1年あたり、2500億ドル(約27兆5000億円)となり、1.9兆ドルのおおよそ13%程度の規模である。
 しかし、その中身はバイデン大統領の戦略的な内容になっている。長期的な失業になる恐れのある方々へ向けた失業対策を行おうとしている点がその目的の1つ。米国内の道路建設整備、鉄道網の整備、電気自動車の給電ヵ所を50万ヵ所設置などで約6210億ドルがあてられている。インフラ投資として、橋やダムを建設することは、日本でも昭和の時代に頻繁に行われていたこともあり、新しい仕事を増やすことによって、コロナ禍で長期的な失業になるリスクの高い、飲食店や観光業では働いてきて、現在も失業状態にあるヒスパニック系や黒人の方々への職種転換を促し、失業者を減らすそうという意欲的な内容である。
 次に、中国との主導権争いで米国がリードを保ち続けることを目的にした政策として、半導体の工場誘致など設計から製造までの内製化に向けた製造業対策に3000億ドルが充てられている。また、風力発電による環境エネルギー対策に1000億ドル充てられており、新型コロナウイルスワクチンの開発で注目を集めたバイオやAI関連を後押ししていくために1800億ドルをあてるなどの内容があげられている。
一方で、資金源確保として、法人税減税の21%→28%への引き上げや、富裕層への増税を示唆。財源確保の増税については、共和党が猛反対することが予想され、この計画通りインフラ投資策が可決されるかは不透明である。3月に成立した先の1.9兆ドルの経済対策は、現在のコロナ禍での緊急対策で、年度内で1.9兆ドルが使われるものの、今回のインフラ投資案は、8年間での内容なので、効果が違ってくる。
 また、2008年のリーマンショックなど、これまでの世界の景気後退局面からの回復過程では、米国主導で世界景気の回復をけん引してきたが、今回も同じく世界景気をけん引していこうとする覚悟がうかがえる。
 中国の脅威が世界的に懸念されるなかで、トランプ政権では米国の貿易赤字の解消が重要ポイントとして注目されていたが、バイデン政権では米国の貿易赤字面には触れておらず、むしろ、人権や法制度といったルールに重点を置いて、米国の国内景気を早期に立て直し、日本や欧州からの積極的な輸出を受け入れることで、米国の世界的なリーダーとしての存在回復を目指していることがわかる。新型コロナウイルスの沈静化が進むまでは、米国のリーダーシップが意識されやすく、ドル/円相場とユーロ/ドル相場でのドル買いトレンドが続く可能性が高まっている。
 


FRBによる3月時点の米国景気先行き見通しと、FRB議長と債券市場との対話の落としどころ   2021/03/23(火)09:14:11  
   米10年債利回りの上昇が止まらない。
新型コロナウイルスのワクチン接種がようやく順調に進み始め、感染拡大ペースが鈍化してきた米国で、株式相場やドル相場に最近大きな影響を与えてきているのが、米10年債利回りの動向である。昨年10月30日には、0.877%であった利回りが、今年の3月に入って、1.6%台と4ヵ月程度でおよそ1.9倍にまで急上昇している。米国景気の回復期待と、先行きの物価上昇への懸念が、上昇要因になっている。
 米10年債利回りの上昇は、米国だけでなく、欧州や日本国債などの上昇要因になっており、11日のECB(欧州中央銀行)金融政策理事会では、キッパリと長期金利の上昇を抑えるために、国債購入を増額する姿勢を鮮明にしたことから、16日と17日のFOMCでも、長期金利上昇を明確に抑えるコメントが期待されていた。
17日のFOMCでは、声明文でこれまでになく、インフレという言葉を多用し、「新型コロナウイルスのパンデミックは、米国および世界中で多大な人的および経済的苦難をもたらしている。回復ペースが鈍化した後、経済活動と雇用の指標は最近上向いたが、このパンデミックによって最も悪影響を受けた業種(旅行、ホテル、飲食、航空など)は脆弱なままだ。委員会は雇用最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す。この長期的な目標を下回るインフレ率が続いているため、FOMCは当面、2%をやや上回る程度のインフレ率の達成を目指す。これによりインフレ率は時間とともに平均で2%になり、長期的なインフレ期待は2%にしっかりととどまる。これらの結果が達成されるまで、FOMCは緩和的な金融政策の姿勢を維持すると予想する。FOMCの最大雇用と物価安定の目標に向けてさらに著しい進展が見られるまで、FRBは引き続き米国債の保有を少なくとも月800億ドル、およびMBS(住宅ローン担保証券)の保有を少なくとも月400億ドル購入を続ける」とし、インフレという言葉をこれまでにないほど丁寧に繰り返し、脆弱な業種を含めて、雇用最大化を目指し、それまでは金融緩和を続けるとはっきり述べ、長期金利が著しく上昇するのを抑えるために、債券購入額を続けると明言しているのが特徴。長期金利の上昇を抑える旨の内容が盛り込まれたのだが、委員会後の会見で、記者がパウエルFRB議長に対し、「長期金利の上昇は景気にマイナスか。他国は上昇を抑える措置をとっているが、パウエル議長の見解は」への答えが「現在の金融政策は緩和的だが、金融市場で金利がしつこく上昇することで市場の秩序を乱すことになれば、我々の目標達成には弊害となる。政策金利の誘導水準と資産買い取りの水準は緩和的な状態を維持しており、景気を支えている」とコメント。11日のECBのように長期金利の上昇を抑えるために行動をとるといった明言がここでもないことから、米10年物国債利回りは上値を試す動きで、18日に年初来最高の1.754%台に上昇している。この10年債利回りの上昇が続いており、ドル/円相場ではドル買い・円売りトレンドが続いている。
 こうした声明文であったので、米国株式相場は2023年までの政策金利を引き上げないことを好感し、上昇している。一方で、債券市場では、同時に発表された、FRBメンバーの先行きの見通しで、インフレ率の指標としているPCE価格指数の中央値が2021年:2.4%、2022年2.0%とパウエルFRB議長が繰り返し述べているとおり、一時的には2.0%を超える場面があっても、その後低下するとしている見通しで、2023年までの政策金利据え置きが明確にになっているにもかかわらず、不信感をいただく感じで、米10年債が売られ、利回りが上昇している。 
株式市場との対話は成功しているものの、債券市場との対話で、パウエルFRB議長がうまくいっていない状況である。足元の10年債利回りが1.7%台であるのに、一時的にせよ、2.4%あたりまで物価が上昇する場合は、まだ0.7%も下落余地があることになるので、債券市場では、パウエルFRB議長の長期金利上昇を抑えるといったコメントを催促している状況になっている。
ちなみに、米地区連銀の1つである、セントルイス連銀が公表しているインフレ率を考慮したブレイク・イーブン10年債利回りは、19日現在で、2.31%以上となっており、足元の10年債利回りの1.725%と比べて、約0.6%も開きがある。この差を埋めるように10年債利回りが上昇を続けると、ドル買いトレンドが続くことになる。債券市場では、どの水準でパウエルFRB議長が、長期金利のこれ以上の上昇を望まないというコメントをするのか、試す相場展開になってきている、いわゆる債券市場の催促状況である。
今週はパウエルFRB議長が、23日に下院と、24日に上院での議会証言がある。24日の上院での証言には,前FRB議長でもあるイエレン財務長官も同席する。
ここでも、債券市場が期待しているようなコメントが得られないと、セントルイス連銀が公表しているインフレ率を考慮したブレイク・イーブン10年債利回りと、足元の10年債利回りの1.725%と比べて、約0.6%も開きを埋めるように、米10年債利回りの上昇が続く可能性がある。
 好調な米株式市場であるが、S&P500種平均株価の予想配当利回りは、19日現在で1.49%であり、これ以上の米10年債利回りの急上昇は、株式市場から債券市場への資金シフトを誘発するリスクがあるので要注意である。
ドル/円相場とユーロ/ドル相場でのドル買いトレンドがいつまで続くのかを占ううえで、注目のイベントである。
 


欧州でのコロナ感染防止策の遅れと、ユーロ安誘導にかじを切ったECB   2021/03/16(火)07:43:35  
   米国では、昨年12月にファイザー社とモデルナ社のワクチンが緊急使用許可を受けてワクチン接種が始まったものの、今年の2月あたりまでは、製薬会社の生産体制の遅れもあって、なかなかワクチン接種が進まなかった。しかし、2月27日に3社目となるジョンソンエンドジョンソン社(以下、J&J社)のワクチンを認可したことで、ワクチンの供給が増えて、ワクチン接種が順調に進みだしている。特に、J&J社のワクチンは1回の接種で抗体ができるので、今後はさらに接種率が進む見通しである。現在では、1週間で約230万回以上を接種できており、11日にバイデン米大統領は、5月1日までに、ワクチン接種を希望する18歳以上の米国の成人全てに1回目のワクチンを接種できるように各州の知事に指示を出している。
 ちなみに、18歳以上の米国の人口は、約2億5844万人いる。米国防総省では、米兵の約3分の1がワクチン接種を拒否しているとし、高齢者以外の米国人にも、ワクチン接種を拒否する人が相当数いるとされている。13日6時現在で18歳以上の米国人のうち6888万4011名が1回以上の接種を受けている。5月1日までに希望者全員の1回以上の接種が視野に入ってきた。感染が広がりにくくなるとされる集団免疫の状態は、人口の70%から90%以上免疫を持つ必要があるとされるので、5月1日時点でバイデン大統領の掲げる目標を達成できたとしても、集団免疫のできる人口の70%には届かない。しかし、8日に米CDC(疫病対策センター)は、ワクチンを2回接種できた市民は、最後の接種から2週間後には免疫ができるとして、免疫ができた後は、マスクをつけないで、社会的距離も気にせずに人と室内で会話ができる、また、免疫ができたのちに、新型コロナウイルスに感染しても、症状がでなければ、検査や隔離をしなくてもよいというガイドラインを発表した。足元では、1日に6万人以上の新規感染者が出ている状況で、感染防止対策は緩めないとしつつも、年内には、集団免疫ができ現状の移動規制や営業時間規制が解除される可能性が高まってきた。
 これに対し、欧州の感染対策は後れを取っている。1つはワクチンの供給が遅れ、接種率が低く、さらに、英国の変異型ウイルスが拡大し始めており、ドイツは都市封鎖を3月28日まで延長を決定。イタリアも15日から4月6日まで再度都市封鎖を開始しているほど。こうした事態に危機感を強めたのがECBである。
 11日に開かれたECB金融政策理事会では、現状維持が決定されたものの、「次の四半期にかけて、パンデミック緊急購入対策での買い入れを今年の初めの数カ月と比べてかなり速いペースで実施すると理事会は予測している」として、欧州でも長期金利の上昇を抑えるために、国債購入を増額する姿勢を鮮明にしたことから、世界的に各中央銀行は長期金利の上昇を抑える動きになるとして、米10年債利回りも11日には1.475%まで低下する場面があり、ユーロ/ドル相場でドル売り・ユーロ買いになり、1.1989ドルまでユーロが買い戻される場面があった。
 理事会後の会見で、ラガルドECB総裁は、「欧州経済は、継続するパンデミックと(移動制限などの)感染拡大抑制策により、2021年第1四半期の経済は再びマイナスになる可能性が高い。インフレは中期的に緩やかなペースで上昇するだろう。インフレ率は、主に一過性の上昇要因とエネルギー価格高により、過去数カ月で上昇している。一方で、需要の低迷や労働市場と生産市場における大幅な緩みができており、基調的な物価圧力は依然として抑えられている。このような状況で、大規模で持続的な市場金利の上昇が続くと、経済の全部門で、金融環境が時期尚早に引き締まるリスクがある。引き続き良好な資金調達環境をささえるなかで、市場金利の持続的な上昇は好ましくない。ECB理事会では次の四半期に月次の資産購入を大幅に拡大することが正当化されると全会一致で決定した。ただし、特別な日時や金利水準などのイールドカーブコントロールではない。パンデミック緊急購入対策の買い入れを調整していく。バイデン米大統領の(1.9兆ドルの)経済刺激策は効果があると確信している。米国内への効果が多く盛り込まれているが、米国の需要がユーロ圏や他国といった外需に向かう可能性があり、ユーロ圏の先行きの経済見通しに好影響を与える可能性がある。ユーロ圏は引き続き、高いコロナ感染拡大と、変異型の拡大に伴って、感染拡大防止が経済活動の重しになる。ECBはインフレ率が持続的に目標に向かうことを確実にするために必要に応じてあらゆる手段を調整する用意がある。中期的にインフレ率に影響する為替相場の動向を引き続き注視していく」として、長期金利の上昇抑制と、ユーロ相場の過度な上昇を警戒し、抑制する見通しを示している。
 ユーロ/ドル相場は、米10年債利回りが急上昇した、2月25日を境にして、2月26日以降は日足チャートで長期のトレンドを示すとされる75日移動平均線を割り込んで推移し始めており、ドル買い・ユーロ売りトレンドになりつつある。3月11日のECBの政策決定とラガルドECB総裁の会見で、長期金利の抑制と、ユーロ相場の上昇を監視していく姿勢が示されたことで、ユーロ/ドル相場はユーロ売りトレンドが続く可能性がある。
 注目は、18日未明に開かれる米FOMC。大方の投資家の予想では、現状維持見通しであるが、会合後のパウエルFRB議長のコメントが注目されている。3月4日にパウエルFRB議長は、米10年債利回りの上昇について、「無秩序な動きとも、FRBによる介入が必要とも考えていない。」とコメントして、米10年債利回りが、上昇する要因になったが、毎週木曜日に発表される、FRBの債券購入残高の推移をみると、2月4日〜3月3日までの1ヵ月間で購入した満期が2年〜30年までの米国債の累計額は856億ドル、インフレ連動債を9億ドルと、合計952億ドルを購入しており、1月から2月3日までの1ヵ月間よりも、154億ドルも多く購入していることが分かった(3月10日発表分も1週間で217億ドル購入)。その結果、FRBも実際は、10年国債をはじめ期間の長い国債の利回り上昇を、何とか抑え込もうと金融調節を行っていることがわかってきている。
そこで、18日未明の会合後のパウエルFRB議長がより踏み込んで、長期金利の上昇を望まないといったコメントが出れば、米10年債利回りの低下→ドル売り要因になる。
 一方で、3月4日と同様な「無秩序な動きとも、FRBによる介入が必要とも考えていない。」とコメントを繰り返せば、米10年債利回りが1.7%以上に上昇するリスクがある。(その場合は、ドル買い要因)
ドル/円相場とユーロ/ドル相場でのドル買いトレンドがいつまで続くのかを占ううえで、注目のイベントである。
 


10年国債利回りの上昇に対する米FRBとECB、RBA、日銀のスタンスの違い   2021/03/09(火)13:20:08  
   2月25日以降、米10年債利回りの上昇傾向と、欧州、豪州、日本の国債利回りも上昇傾向になっている。
米10年債利回りは、2月24日の終値ベースの利回りは、1.38%であったのが、3月5日には、1.625%まで上昇する場面があった。5日の終値ベースでは、1.566%で、1週間程度で0.186%も上昇している。
 欧州では、ドイツ10年債利回りは同様に、-0.304%であったのが、-0.21%をつける場面があったものの、5日の終値ベースでは-0.304%と乱高下しつつも同じ水準順になっている。フランス10年債利回りは、同様に-0.041%であったのが、-0.21%をつける場面があったものの、5日の終値ベースでは-0.055%に低下している。リーマンショック時に、国債の一部がデフォルトした、ギリシャの10年国債利回りは、同様に1.011%であったのが、1.139%をつける場面があったものの、5日の終値ベースでは0.966%になっている。現状では、世界一信用力の高いはずの米10年債利回りよりも、リーマンショック時にデフォルトしたギリシャ10年債利回りの方が低い。
欧州では国によってまちまちではあるが、総じて、米10年債り利回りのような急上昇はなく、うまく抑えられている。
 豪10年債利回りは、同様に、1.615%であったのが、1.871%をつける場面があったものの、5日の終値ベースでは1.783%と乱高下しつつも、1週間程度で0.168%も上昇している。
 日本の10年債利回りは、同様に、0.12%であったのが、0.155%をつける場面があったものの、5日の終値ベースでは0.08%と乱高下しつつも、1週間程度で0.04%上昇している。
 欧州と日本を除き、相対的に各10年債利回りは、上昇している。
これは、そもそも英国で、新型コロナウイルスのワクチン接種が進むなかで、景気回復期待が高まり、英10年債利回りが上昇し始めたのをきっかけに、米10年債利回りが上昇する流れになったことが始まりである。
 ただし、ここにきて上昇している米国と、低下している欧州、日本とは各中央銀行の政策スタンスで違いが出る結果になっている。
 というのも、米国では、2月23日、24日の米議会証言で、パウエルFRB議長が、最近の米10年債利回りの上昇は、景気の回復期待を反映したものであるとして、利回り上昇を容認する発言を行ったことが切っ掛けとなり、25日以降の急上昇につながっている。さらに、3月4日にもパウエルFRB議長は、「10年債利回りの上昇に注視しているが、無秩序な動きではなく、FRBの介入が必要だとは考えていない。現状のFRBのスタンスは適切である」と再度、利回り上昇を容認するコメントを出している結果、上昇している。
 一方、欧州では、3月2日にデギンドスECB(欧州中央銀行)副総裁が、「債券利回りの望ましくない上昇に対し、十分対応できる柔軟性をECBは持っている」とコメント。パネッタECB専務理事も「債券利回りの上昇を抑えるため、ECBは債権買い取理学の増額や、買取プログラムの拡大を積極的に行うべきだ」とコメントしており、米パウエルFRB議長よりも明らかに債券市場の利回り上昇をけん制する発言をしていることから、先週の欧州の国債利回りは低下する流れになっている。
 日本でも、5日に黒田日銀総裁が、国会での答弁で「(10年物国債をゼロ%程度に誘導する長期金利の)変動幅を拡大する必要があるとは考えていない」とコメントしたことで、利回りが低下している。
 豪州は、3年債利回りの利回り水準を政策目標にしているが、2月25日以降断続的に、国債の買い取り額を増額しており、明確に利回り低下を促す金融政策を行っている。にもかかわらず、利回り上昇を抑えきれていないという状況である。
 このように、米FRB以外は、明確に自国の10年物国債の利回り上昇を抑える金融政策スタンスをとっているのに、米国だけでが、利回り上昇を容認しているという差が利回りの動向に出ている。その結果、米ドルが直近の2週間は、多通貨に対し強い通貨になっている。
 今週は、米10年債利回りがどの程度まで上昇するのか、天井を探る展開になる。米国の物価指標の1つである、CPI(消費者物価指数)の2月分の発表が、3月10日に予定されている。事前予想では、前年比∔1.7%見通し(1月:1.4%)と大幅な上昇見通しである。5日には1.625%をつける場面があったが、2月のCPIが、1.7%を超えてくれば、米10年債利回りは、もう一段上の1.7%台を目指す可の可能性がある。(ドル買い要因)。反対に、CPIが上昇せずに低下すれば、米10年債利回りが低下し、ドル売り要因になる。
24日の米FOMCを控え、FRBメンバーやイエレン財務長官などから、こうした米国債利回りの上昇をけん制するコメントがでるか注目である。
 


日米欧の株式相場の急落を誘ったWTI原油先物価格動向と米10年債利回りの目先のめど   2021/03/02(火)09:14:39  
  WTI原油先物価格は、2月25日には年初来高値となる63.81ドルをつける場面があった。昨年の11月以降、原油先物価格が右肩上がり相場になっている。昨年10月30日の35ドル台から、わずか4か月間でおよそ1.8倍にもなっており、原油先物価格の上昇の要因は、新型コロナショックでの需要の大幅な落ち込みに対し、OPEC(石油輸出機構)にロシアなどの産油国が集まった、OPECプラスでの協議がうまくいっており、協調減産できていることが大きい。これに加えて、昨年12月から、ようやく新型コロナウイルスワクチンができ、英国で国民の約27%、米国で約19%、欧州ではまだ4%台であるが、ワクチン接種が進み始め、現状では感染防止効果がではじめており、世界景気の正常化が期待され、先行きの石油の需要増を見越した買いが、原油先物市場を押し上げている。また、米テキサス州の寒波で石油施設の約10%が休業となっていることも、買い要因になっている。
米国の移動手段は、自動車が主力であり、原油先物価格の上昇は、物価上昇を強く感じる1要因であり、4ヵ月で価格が約1.8倍になり、この先、景気がさらに良くなれば、もっと物価が上がるのではないかと感じるのは自然である。こうした物価上昇懸念が広がっており、26日に発表の米国のインフレ率の指標である1月のPCE価格指数は前年比∔1.5%に上昇。価格変動の大きい、食品とエネルギーを除くコアPEC価格指数も同∔1.5%に上昇しており、価格変動が大きい食品とエネルギーを除いても物価が上昇する兆しがある。
こうした生活感のなかで、23日と24日の議会証言で、パウエルFRB議長は、「金融政策では、政策金利はこれまで通り(2023年あたりまで)上げない」とはっきり言ったものの、一方で「最近の国債利回りの上昇は、金融市場が正常化しつつある動きであり、最近の物価上昇は一時的なもので、持続して(前年比∔2.0%となるような)FRBの目標の達成には3年程度かかりそうだ」という認識を示した。
債券の投資家としては、FRBは物価の上昇を注意深く見守っているので、適宜必要な対策をとるといった、コメントを期待していたのに、FRBは米国債利回りがまだ上昇しても放置するつもりだといった受け止められ方をされて、国債が売られる流れが加速している。25日は10年債利回りは、1.614%まで一気に上昇した。
利回り上昇から、26日にドル/円相場でドルが106.6円まで買われ、年初来高値を更新する場面があった。
なお、10年債利回りの急上昇を嫌気して、26日には日本、欧州、米国の株式相場が急落したことで、FOMCメンバでーあるアトランタ連銀のボスティック総裁は、米国債利回りの上昇について、水準としてはまだ低水準であるが、注視し続けるとコメントするなど、これ以上の急上昇をけん制する発言がみられている。今週は、FOMCメンバーやイエレン財務長官などから、こうした米国債利回りの上昇をけん制するコメントがでたり、WTI原油先物価格が下落すると、米10年利回りが低下し、ドル売り要因になる。
米10年債利回りは、WTI原油先物価格と同様に、昨年10月30日には0.877%であったのが、2月25日に一時、1.614%まで上昇しており、4ヵ月で約1.8倍の利回りになった。この金利上昇ペースが速いことも懸念されている。
 ただし、今後も石油先物価格が上昇を続けていくかは、難しい。世界的に石油生産の最も生産性が悪いとされる米国のシェールオイルでも、50ドル台が損益分岐点であり、60ドル台になると利益がでる水準であり、米国は、OPECプラスとは強調していない。60ドル台の価格が続けば、米国のシェールオイルが増産され、供給面で過剰感が出て、価格の下落が予想される。原油先物価格の上昇が、先行きの米国のインフレ上昇懸念を招いており、米10年債利回りの上昇要因の1つになっているので、WTI原油先物価格が下落するとインフレ懸念が和らぐ可能性がある。
 景気回復面では、ワクチン接種が進んでいる英国でも、都市封鎖の完全解除は6月の見通しで、飲食店や観光業などが完全正常化に向かうかどうかは、それ以降であり、感染動向次第である。
 米国では、自然免疫ができるとされる人口75%のワクチン接種が見込まれるのは、早くても、2022年初め頃とみられており、観光業や接客業の完全正常化はその先であり、まだ時間がかかりそうである。
 バイデン政権がまとめている1.9兆ドルの失業対策は今年の9月末までの分であり、完全正常化がまだ先になるならば、現在失業している人々の消費行動は慎重になる可能性がある。
従って、FRBは2023年あたりまで物価上昇が持続して2.0%を超える状況は難しいとみており、政策金利も2023年あたりまでゼロ金利の維持をコメントしていることから、一旦、足元の10年債利回りが低下する可能性が高いとみている。ワクチン接種の進捗と、具体的な規制解除が進む中で、雇用が充分に回復しないと、インフレ率の長期的な上昇はパウエルFRB議長が述べるような見通しになる可能性が高い。
では、米10年債利回りの目先の上昇めどはどのあたりになるのか。米国のインフレ率の指標である1月のPCE価格指数は前年比1.5%となっており、これを上回る水準である1.6%から1.7%あたりが目先の利回りのめどと分析している。25日に一時1.614%をつけたことから、これが目先の天井と意識されれば、1.2%台までゆっくり低下する可能性もある。
FOMCメンバーやイエレン財務長官などから、こうした米国債利回りの上昇をけん制するコメントに注目。
なお、米10年債利回りの低下は、ドル/円相場で、ドル売り要因になる。
 


WTI原油先物価格動向と米10年債利回りの目先のめど   2021/02/23(火)09:15:38  
  昨年の11月以降、原油先物価格が右肩上がり相場になっている。
WTI原油先物価格は、昨年10月30日の35ドル台から、先週の2月18日には、62.26ドルをつけており、およそ1.8倍にもなってきている。原油先物価格の上昇の要因は、新型コロナショックでの需要の大幅な落ち込みに対し、OPEC(石油輸出機構)にロシアなどの産油国が集まった、OPECプラスでの協議がうまくいっており、協調減産できていることが大きい。これに加えて、昨年12月から、ようやく新型コロナウイルスワクチンができ、英国や米国、欧州などでワクチン接種が開始され、現状ではおおむね感染防止効果がではじめており、世界景気の正常化が期待され、先行きの石油の需要増を見越した買いが、原油先物市場を押し上げているからである。
 ただし、今後も石油先物価格が上昇を続けていくかは、難しいとみている。というのも、世界的に石油生産の最も生産性が悪いとされる米国のシェールオイルでも、50ドル台が損益分岐点であり、60ドル台になると利益がでる水準であるからである。米国は、OPECプラスとは強調しておらず、最近の原油先物価格の上昇は、米国の物価の上昇要因になっている。コロナ禍で、接客業や観光業がまだまだ営業自粛を強いられている現状での物価上昇は好ましくない。米国の移動手段は、まだ自動車が主力であり、原油先物価格の上昇は、個人給付を手厚くしても、その経済の下支え効果をそぐ要因になる。原油先物価格の上昇が、先行きの米国のインフレ上昇懸念を招いており、米10年債利回りの上昇要因の1つになっているので、米国内で今後、積極的なシェールオイルの増産が始まれば、WTI原油先物価格が下落する可能性がある。
米10年債利回りは、2月15日以降は上昇基調が続き、ドル買い要因になっている。19日には1.363%まで上昇する場面があった。特に、1.9兆ドルのバイデン政権の財政政策の実施期待と、WTI原油先物の上昇傾向が続いていることで、米国のインフレ率の上昇懸念が重なり、米10年債利回りの上昇要因になっている。
ただし、米2年債利回りは、18日発表の前週分の新規失業保険件数が5週連続で80万件以上と高水準であることから、足元の米国の雇用市場の回復の鈍さを警戒して、安全資産が買われ、利回りは低下している。
では、10年債利回りの目先の上昇めどはどのあたりになるのか。米国のインフレ率の指標である1月のCPIは前年比+1.4%、12月のPCE価格指数は同1.3%となっており、これを上回る水準である1.4%から1.5%あたりが目先の利回りのめどになるとみている。今週ももう一段上昇する可能性が高まっており、ドル/円相場でのドル買い要因になる。
 


足並みを揃えたバイデン政権とFRBによる雇用対策   2021/02/16(火)07:21:41  
   2月10日のパウエルFRB議長のニューヨーク経済クラブでの講演は、バイデン政権の雇用重視政策をあらためて示す会見になった。
パウエルFRB議長は、「失業者数の現状と、新型コロナウイルス感染を克服した後の就職難の持続リスクを踏まえると、最大雇用を実現するためには、金融政策の緩和継続だけでは不十分である。官民がお互いに努力し、社会全体の雇用拡大が必要である。堅調な雇用市場を実現するには、短期的な政策と長期的な投資による継続的な支援が必要で、そういう状況にすることで、職を求めている人が技能を試す機会を与えられ、米国景気の拡大に貢献できる。さらに、全ての人が働く機会を得られれば、繁栄の恩恵を受けられるようになる。堅調な雇用市場の恩恵を十分に実現するには、短期的な政策と長期的な投資による継続的な支援が必要である。そうすることで職を求めている全ての人が技能と機会を与えられ、米国の繁栄に貢献するとともに、繁栄の恩恵を享受できるようになる。米国経済を最大限盛り上げて、米国の繁栄を共有するための国家戦略が望まれる」とコメントしている。
 従って、1.9兆ドルの経済対策を実行することで、米経済成長が加速し、物価上昇を招きやすいことから、足元では米10年債利回りが上昇傾向になっていることには触れず、物価よりも雇用重視の姿勢を示している。
12日のG7財務相・中央銀行総裁会議で、イエレン財務長官は、参加各国の財務相と中央銀行総裁に対し、「今こそ、大きな政策を行うべきときだ」として、各国に対し、新型コロナウイルスのパンデミックによる各国の経済減速に対して、金融と財政両政策を積極的にとるように呼び掛けている。
バイデン政権は、総額1.9兆ドルの財政政策を、下院と上院ともに、民主党単独で可決させる姿勢を示しており、バイデン政権、イエレン財務長官、パウエルFRB議長が一致して、雇用対策を重視していく姿勢を示している。
 米10年債相場は、1月25日以降は利回りの上昇傾向が続き、2月8日に節目となる1.20%まで売られた後は、これまで売られてきた買い戻しが入る展開になり、10日には1.12%まで低下する流れになった。しかし、パウエルFRB議長やイエレン財務長官のこうしたコメントから、トランプ政権同様に米国経済のアクセルをフル稼働させる姿勢を示したことで、米国景気回復に伴う、物価上昇を織り込み始める感じで、10年債は再び売られる流れになっており、12日には1.213%まで利回りが上昇している。
 米10年債利回りの上昇は、ドル/円相場で、ドル買い要因になるので、ドル買いトレンドに向う可能性が高まっている
 


米2年債と10年債利回りで迷いがみられる米国景気の方向感   2021/02/09(火)06:54:50  
  最近の米国債利回りの利回りの動向をみると、米国景気の見方に差が出てきていることがわかる。というのも、米国の短期金利の指標である米2年債相場は、総じて買われ利回りが3週連続で低下している。2月5日発表の米1月の非農業部門雇用者数が前月比+4万9000人にとどまり、足元では米国景気の減速が続くことへの不安が高まり、昨年5月8日につけた、史上最低利回りの0.105%をつけるほど低下する場面があった。
一方、米国の安全資産で長期金利の指標でもある米10年債相場は売られ、利回りが上昇している。理由は、英国が新型コロナウイルス対策で、ワクチン接種が進み始めて、3日には英国民の約15%にあたる1000万人を達成。2月15日までに感染リスクが最も高い1500万人の接種が達成できる見通しを示したことと、4日に開かれたBOE金融政策委員会で、今後の英国景気見通しを、1-3月期は縮小するものの、ワクチン接種の取り組みによって、景気は急回復に向かうとの見通しを示したことから、英10年債利回りが上昇し、英国に次いで、ワクチン接種が進みつつあり、1.9兆ドルの景気対策が期待され、長期的には米国の景気回復が見込めれることから、米10年債利回りは上昇する流れになった。5日には1.18%まで上昇する場面があった。
このように、2年債利回りは足元の新型コロナウイルス感染拡大で、雇用が低迷している米国景気の不安さを反映して、買われ、利回りが過去最低水準まで低下している一方で、長期的には米国景気の回復を見込んで、10年債は売られ、利回りが上昇している。
国債の満期までの期間を短い順から、長い順に横に並べて、利回りの傾きをグラフ化したものを、イールドカーブと呼ぶが、米国債利回りを比較すると、2年債利回りが、0.105%、10年債利回りが1.18%ということは、年数が長い国債の利回りが高いので、これは正常な状態といえる。
一方、米国の物価指数であるPCE価格指数では、直近の数値である昨年12月は前年比+1.3%であるので、物価上昇率が1.3%であるのに比べて、米2年債利回りは0.105%ということは、2年債利回りが低すぎるのか、インフレ率が高すぎるのか、どちらかである。米国の政策金利は0%〜0.25%としており、物価は低いながらも上昇しているという点を踏まえると、2年債が買われすぎで、利回りが低下しすぎているということになる。
現状の新型コロナウイルスの米国経済に与える影響を考えると、足元ではまだかなり不安感が強いことがわかる。米国でワクチン接種が進み、先行き懸念が和らいでいくと、2年債が売られ、利回りが少なくともその時のPCE価格指数より、高くなれば、米国景気の正常化が金融市場でも確認できることになる。
ドル指数の方向感が分かれ目になっているのと同様、米国2年債利回りが上昇するか、さらに低下するのかが分かれ目のところに来ている。2年債利回りがさらに低下するならば、米国景気への不安感が高まっている1つの証になる。
ドル指数、米国債利回りの上昇は、先行きの米国景気の回復に対するバロメーターでもあり、ドルの強さのバロメーターでもある。
 


FOMCの政策決定とドル指数の方向感   2021/02/03(水)09:17:14  
   1月27日のFOMCでは、現状維持が決定された。声明文で目立ったのは「足元の米国経済は、この数ヵ月緩やかになってきており、(新型コロナウイルスによる)パンデミックの影響を最も受けている産業(娯楽・接客サービス業、航空業など)の弱さが目立っている。景気の動向はワクチン接種の広がり具合も含め、ウイルスの拡大動向に大きく左右される状況が続く」として、先行きの米国景気の回復ペースの鈍化見通しと、遅れがちなワクチンの供給面と、ワクチンの接種が感染拡大の抑制と景気回復に大きな影響を示すとの見通しを示しているのが特徴である。
 従って、昨年11月以降、史上最高値を更新してきている米国株式相場の好調さにともなう、米10年債利回りの動向に影響を与える、資産買取額の縮小については、FOMC後の会見で、パウエルFRB議長は「FRBは米国債の購入を少なくとも月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を同400億ドルのペースで買い入れる施策を、完全雇用と物価安定目標に向けて十分に近づくまで続ける」と改めてコメントしたことから、物価目標であるPCE価格指数で前年比+2.0%と失業率でおよそ4%の達成が見込める2023年末あたりまで、現状の債券購入策が続く見通しであると改めて認識された。その結果、10年債利回りは3週連続で低下傾向になっている。1月28日には1%を割り込み、0.996%まで買われる場面があった。
 一方、新型コロナウイルスのワクチン開発動向では、すでに承認されているファイザー社とモデルナ社のワクチンに加え、1月29日にジョンソンエンドジョンソンが、開発中の常温保管可能なワクチンは、1回の接種でも、抗体への有効性が66%あることを発表。2月早々に米食品医薬品局へ承認申請する予定で、米国内では3社目の認可見通しとなっており、英アストラゼネカのワクチンにおいても、3月か、4月中には認可見通しとなっており、認可されるワクチンが増加することによって、遅れがちなワクチンの供給体制が整う見通しである。
 今後のドルの方向性を決める最も大きな要因になると思われる、主要6通貨ベースでのドル指数をみれば、先週は上昇。1月6日に安値89.206を底に反発傾向になっていることもドルが買われやすい地合いになっている。1月29日は90.77をつける場面があった。ただし、ドル指数の観点から見れば、89.206で底打ちしたのか、長期下落トレンドの一時的な反発局面かはまだはっきりしていない。29日の終値は90.584(22日:90.238)である。米10年債利回りが1%を割り込んで推移するならば、もう一段のドル指数の低下の可能性がある。
 


イエレン財務長官発言とバイデン大統領の就任演説から見るドル政策   2021/01/27(水)08:10:30  
  1月19日に米議会上院の財政委員会が開かれ、次期財務長官に指名されているジェネット・イエレン前FRB議長が演説。イエレン氏は「総額1兆9000億ドル(約200兆円)の新たな追加景気対策案は、米国の債務を大きく増加させることはよくわかっている。けれども、金利が歴史的な低金利にある現在、強い行動に出ることが重要で、長期間、苦しんでいる人たちを今支援することで、将来的な恩恵は、足元の代償を大きく上回るだろうと思っている」「競争上の優位を得るために、弱いドルを米国が目指すことはない。意図的に通貨価値を操作する外国には反対し取り組んでいく。為替レートは市場原理に従って動くと信じている」とコメントし、従来の米国政権が繰り返してきている「強いドル」を目指すと受け止められ、ドル/円相場には特に影響がなかった。
さらに増税ついては「年間所得が40万ドル(約4100万円)未満の世帯については引き続き現状維持を検討するが、それを超える富裕層については、法人税率の引き上で増収となる部分を社会インフラや社会支援等の他の投資プログラムに資金を振り向けることもできる」として、富裕層の増税を進める可能性を示した。
20日の第46代大統領就任演説でジョセフ・バイデン氏は「米国は歴史的にみて、南北戦争や大恐慌、世界大戦、9.11テロといった困難と犠牲と失敗が相次ぐなか、それでも常に私たちの善の力が勝ってきました。大変だったその時々に、必要な人数が集まり、力を合わせて、この国を前進させてきたのです。今回もまたそれができます。国民がまとまって団結して、この歴史的に危機的な脅威を乗り越えましょう。世の中は何も変わらないなどと、言わないでいただきたい。ここからポトマック川を挟んだ向こう側にはアーリントン国立墓地があり、そこでは全身全霊を捧げた英雄たちが永遠に眠っているのですから。皆さん、、ここにいる下院や上院で働く同僚はみんな、世界が自分たちを見つめていることを承知しています。世界が、今日の私たち全員を見ているのです。なので、この国の国境の外にいる人たちにはこう申し上げます。アメリカは試練を受け、前よりたくましくなって乗り越えました。私たちは同盟関係を修復し、再び世界とかかわっていきます。過去の課題に対応するためではなく、今日や未来の課題に取り組むため。神がアメリカを祝福しますように。そして神が、この国の兵を守ってくださいますように。」という民主主義の勝利と、第2次世界大戦以降、最も米国民がなくなっている新型コロナウイルスの脅威に立ち向かうこと、そして、こういった脅威に立ち向かうためには米国民が団結することが必要だと強調。重点的に富裕層ではない一般の米国民と、米国をみている世界中の人たちに向けたメッセージとなっている。
こういったイエレン財務長官、バイデン大統領の観点からも、バイデン政権での政策の柱は、コロナショックから米経済を立て直すための積極的な財政政策と低金利政策の長期化が想定される。さらに、「弱いドルを望まない」といった、これまでの米政権が繰り返してきた「強いドルを目指す」ということを言い換えていることから、「ドルの下落を想定している可能性がある。ドル/円相場は米国債利回りとドル指数の動向が注目である。
 


ドル指数と米国債利回りの関係   2021/01/19(火)07:29:55  
  1月14日にパウエルFRB議長が、「米国経済は、FRBの政策目標からまだ大きくかけ離れている状況で、われわれの行動が十分達成されていると判断できるまで、金融政策を強力に継続することを表明する。これまでの世界の金融危機の教訓は、金融緩和の解除を早まらないように注意すべきだ。現状は、出口戦略の話をする時期ではない」とコメントしたことで、米国債が買われ、利回りが低下している。米国の長期金利の指標で安全資産でもある米10年債相場は、15日には1.07%まで低下する場面があった。
このパウエル発言前は、バイデン次期政権が進めようとしている、個人給付の上積みや、州や地方政府への補助、新型コロナウイルス対策のワクチン接種推進など、追加経済対策による財政赤字拡大懸念から売られ利回りが上昇。12日には1.18%まで上昇していた。12日のドル指数の終値は90.093。
この結果をみれば、パウエルFRB議長の利回りを下げる、アナウンスメント効果は大きかったといえる。
主要6通貨(ユーロ、円、英ポンド、カナダドル、スウェーデンクローナ、スイスフラン)に対する米ドルの相対的な強さを示す、ドル指数の推移をみれば、2020年3月以降は低下傾向になっている。
直近では2021年1月5日につけたドル指数は終値ベースで89.43を底に反発してきている。ドル指数が底打ちすれば、ドルが目先は買われる可能性がある。先週のドル買いの動きは、米国債利回りの上昇要因が大きい。従って、足元のドル指数の動向のポイントは米国債利回りがどう動くかである。
先週はコロナ感染防止策の強化から指標では、新規失業保険申請件数が増加し米国景気の悪化懸念が広がり、安全資産として米国債が買われ、利回りが低下する一方、基軸通貨としてのドル買い要因にもなったことで、ドル指数は14日には90.239となった。ドル指数の変動要因は足元では米国債利回りの影響が強いものの、基軸通貨としてドルが注目される場面では、米国債利回りの動向には関係なく動くという特徴がある。
今週は、もう一段のドル指数の低下の可能性がある。20日からバイデン新政権が発足する。しばらくは、米国債利回りの動向とドル指数の動向が、ドル相場で注目である。
 


ドル指数からみるドル/円相場見通し   2021/01/14(木)13:29:55  
   米ドルの相対的な強さを示す指標にドル指数がある。ドル指数には、FRBが公表しているものと、ICE(インターコンチネンタル取引所が公表しているもの、そして、BIS(国際決済銀行)額評しているものノ3つがある。一般的に注目度が高いのは、ICEのドル指数で、主要6通貨(ユーロ、円、英ポンド、カナダドル、スウェーデンクローナ、スイスフラン)に対するドルの相場を指数化したものである。ちなみに、FRBのドル指数は米国と取引のある26通貨を対象に指数化。BISのドル指数は、さらに40通貨における米ドルの相対的な強さを指数化しているのが特徴である。
 ICEのドル指数の推移をみれば、2020年3月以降は低下傾向になっている。
新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に広がり始め、一時的に基軸通貨であるドルが買われたものの、都市封鎖やワクチン開発などから、世界的な金利引き下げ、特に米国も政策金利であるFFレートの誘導目標が、0-0.25%になっており、米国の国債利回りの低下に伴って、相対的なドルの魅力が低下しているのが現状である。
昨年3月以降のドル/円相場は、相対的にドル指数の低下に連動して、ドル買い傾向になっている。ただし、過去3年で直近の安値圏である2018年2月のドル指数は、終値ベースで88.59をつけた後、反転していることから、2021年1月8日のドル指数の終値は90.09であり、この辺りで、ドル指数が底打ちすれば、ドルが目先は買われる可能性がある。ポイントは米国債利回りの動向。20日に誕生するバイデン新政権が、巨額の財政赤字を伴った財政政策を行うならば、米国債利回りが上昇して、ドル指数の上昇要因になるが、コロナ感染の深刻さで、失業者、指標では新規失業保険申請件数が増加し米国景気の悪化懸念が広がると、米国債が買われ、利回りが低下し、もう一段のドル指数の低下の可能性があり、今後はドル指数が下げ止まるか、さらに下落するのかが注目である。
 


2021年の米国の経済見通しとドル/円相場見通しのカギを握る米ジョージア州選挙   2021/01/04(月)16:55:36  
  2020年のドル/円相場を振り返ると、新型コロナウイルスの影響が色濃くだてことがわかる。特に中国での感染拡大が深刻化し、世界的な同時株安が進んだ3月には、基軸通貨としてドルが買われ、ドル指数は3月20日に終値ベースで102.817まで上昇する場面があった。
中国では2月からいち早く都市封鎖を実施。欧州や米国でも都市封鎖を行った結果、2020年4-6月期GDPは史上最悪のマイナスを記録した。米国では前期比年率換算で-31.4%。ユーロ圏では前期比₋11.7%(ざっくりとした年率換算:-46.8%)。日本は、-29.2%と散々な状況であった。
そこで、この落ち込みを急回復させるべく世界的に過去最大の財政政策がそれぞれ打ち出され、7-9月期GDPは、米国で+33.1%、欧州で前期比+12.5%(ざっくりとした年率換算:+50.0%)。日本は、+22.9%とこちらも過去最大の回復となる動きとなった。
このように7-9月期に世界各国の景気回復が急上昇する過程で、基軸通貨としてのドルは売られる流れとなり、終値ベースで5月18日以降は、100を割り込む流れに転換。昨年末の12月31日には終値で89.937までドルが売られている。現状では、新型コロナウイルスの感染拡大が昨年の3月よりも深刻になっているものの、先行き見通しではドル指数は上昇せずに、もう一段の低下が見込まれている。
理由は、新型コロナウイルスのワクチンの開発に成功し、2021年後半からの新型コロナウイルス感染拡大は収束に向かい始めるとの見方が増えているからで、現状のような営業時間の短縮や外出規制を行わなくても、ワクチンによる免疫効果が浸透することで、世界経済が再び正常化に向かうとの見通しが主流になっているからである。ただし、そうした感染拡大の収束後の景気回復は、中国と米国に依存することになる。特に、GDPが世界一である、米国の景気回復がけん引役となって、欧州や日本の景気回復が軌道に乗る見通しである。
新型コロナウイルスの感染収束は2023年末あたりまでかかる可能性があるものの、昨年12月16日に開かれたFOMCの先行き見通しでは、2023年末には失業率が、コロナ前の水準を下回る3.7%まで低下する見通しになっていることから、景気回復に伴った米国の利上げが、遅くても2024年からは開始される見通しとなっている。当然、米国の利上げは、ドルが買われる要因になることから、景気回復に伴う利上げが期待されるようになれば、実際の利上げ時期より数カ月前からドル指数が上昇する可能性がある。
特に、今年1月5日に行われる米ジョージア州での上院議員の決選投票で、2名とも民主党が獲得すれば、下院だけでなく、上院も民主党が過半数を獲得するので、バイデン政権の政策は民主党の公約に沿って、勧めやすくなる。民主党は昨年末に成立した追加経済対策のうち、個人給付金については、2000ドルを主張し、さらに全米の州や市への補助金に前向きなことから、さらに巨額の追加経済対策を行う可能性がある。その場合は、12月16日のFOMCメンバーの先行き見通しよりも、前倒しで、米国経済の早期回復、利上げ時期の前倒しになることから、ドルが再び上昇し始める可能性がある。足元ではもう一段のドル指数の低下、ドル/円相場でのドル売り・円買いが見込まれるものの、意外と早く底打ちになる可能性がある。1月5日の上院選挙の結果は要注目である。
 


ようやく合意できた英国とEUとのFTA(自由貿易協定)の概要とポンド相場見通し   2020/12/28(月)18:29:37  
   2020年12月24日のクリスマスイブのプレゼントということで、約4年半もの間、まとまらなかった英国とEUとのFTAについて、ついに合意された。
多くの投資家は、今回のFTA協定では、英国とEUとの関係は、おおむねこれまでと変わらないと受け止められている方が多いと思うものの、実際は、英国がEUから離脱することで、英国とEUの先行きはかなり違ってくることがわかる。
 FTAの合意内容は、今後、英国やEU諸国の各議会で議論されることから、まだ詳細は開示されていないものの、合意文章は2000ページもなるという今回の合意内容を点検したい。
 まず、自動車などモノ取引については現状のように関税ゼロとなる。航空、鉄道、陸路、海上交通などの移動のルールは、現状のままを確保する。ただし、通関手続きについては、EUからのものは英国が復活させる。
しかし、1月1日以降は英国とEU間の人・モノ・サービスの自由な移動は終了する。英国内では、移民の方々が低賃金で雇用されることが多く、英国民の仕事を奪っているとの批判が根強い。従って、英国は移民労働者を制限する。金融分野では、英国とEUで規制や監督を分離する。欧州の拠点を英国に置いている金融機関は、これまでのように英国内と欧州との規制や監督が同じではなく、別々のものとなり、それぞれのルールに従った対応が必要になる。ただし、180度全く違うルールになることはなく、どの程度の差があるのかは今後の課題となる。特に、景気が悪化する場合や、金融機関のストレステストなどは違ってくる可能性がある。
漁業権については、当初は2から3年程度の現状水準の維持を主張していた英国が譲歩し、英国海域でEUの漁獲量を今後5年6ヵ月は現状の水準を維持することを認める。その後は、英国と各国との個別交渉に段階を経ながら移行していく見通し。
 紛争の解決にあたっては、英国はEUルールを尊重するものの、EUルールや欧州裁判所の影響から外れる、などとなっており、このように分野ごとに見ていくと、FTAで合意したものの、英国の最大サービスである金融部門では、大きく変化し、ルールや監督機関等もこれまでとは違ったものとなるので、今後これらの影響が英国とEU にどのような影響を及ぼすのかは、現状では不透明な部分が大きい。
しばらく、ポンド相場は、これらを影響を見極めつつ、方向感を試す動きが始まる見通しである。大きな方向性として、ジョンソン英首相が強調しているような、英国の主権回復と、英国経済が発展するならば、ポンドの買い要因になる。英国は今後、TPP(環太平洋パートナシップ協定)などアジアとの関係強化を目指しており、期待したい。
 


米国景気について強気見通しを示したFRBのワクチン接種がもたらす米国景気正常化の道のり   2020/12/21(月)16:12:17  
   12月16日に開かれたFOMCでは、期待された量的金融緩和策の月額の債券購入額の拡大は見送られたものの、失業率が4.0%(現在、6.7%)あたりまで低下することが見込まれる2023年までを想定し、完全雇用と物価安定がみられるまで、月額で米国債800億ドル(約8兆2400億円)とMBS(住宅ローン担保証券)を400億ドル(約4兆1200億円)ずつ、合計1200億ドル(約12兆3600億円)購入する政策を継続すると発表。
 米国内では、新型コロナウイルスのファイザーのワクチンが14日から、モデルナのワクチンが21日から接種が始まるものの、来年の1月までは医療従事者と高齢者しか行きわたらず、またファイザーのワクチンはマイナス70℃という温度管理が難しいこともあって、当初予定していた年内2000万人分の接種には届かない見込みとなっている。ロイター等の最新の世論調査では、米国民のワクチン接種希望者は約61%程度となっていて、普通の米国民の接種開始は2月以降の予定で、アザー米厚生長官は、6日に2021年4-6月期までに米国民の接種希望者全員に受けられるとの見通しを示している。
 従って、先週は1週間で158万2200人以上が新規感染し、1日あたりの感染者数が過去最多ペースで22万6000人以上となるほど、感染拡大が深刻化している現状に対し、米国内の足元の感染防止は都市封鎖などで、人との接触規制や外出規制の強化しかない。
 今回のFOMCで示されたFOMCメンバーの米国景気の先行き見通しでは、前回の9月のFOMCで示された見通しよりも、全体としては米国景気は強めの回復が見込まれている。
 GDP見通しでは、2021年が4.2%(前回:4.0%)、2022年が3.2%(前回:3.0%)となっている。失業率見通しは、2021年末が5.0%(前回:5.5%)、2022年が4.2%(前回:4.6%)、2023年が3.7%(前回:4.0%)となっている。物価(PCE価格指数)見通しは、2021年末が1.8%(前回:1.7%)、2022年が1.9%(前回:1.8%)、2023年が2.0%(前回:2.0%)となっている。FRBの現状での政策目標は、最大雇用の達成が失業率で4.0%程度、物価目標で前年比+2.0%の安定した状況であることからして、今回決定された月額1200億ドルの量的緩和策の継続が2023年末あたりまでとみられている。
 パウエルFRB議長は、FOMC後の会見で、「米国景気の先行きはコロナの感染状況次第だ。極めて不透明で、不確実性が高い。ワクチンの開発状況は良い知らせではあるが、生産や配布動向や、接種された方々の実際の感染防止効果が出始める時期等をふまえると、足元の今後数ヵ月は(現状の都市封鎖や移動規制を続けなければならず)試練の時期となりそうだ。(ワクチンの効果が出て、感染動向が現状から減少し始めて、都市封鎖や移動規制を行わなくて済むようになり、経済が正常に向かい始めるのは、早くてもワクチン接種が希望者にいきわたってから以降になるだろう)」とコメントしており、21日に可決予定の総額約9000億ドル(約92兆7000億円)の追加経済対策で、米国景気を下支えできるのかどうかもポイントである。
 米国景気よりも回復力が弱い欧州や日本は、米国景気が2021年後半以降に、コロナ前の経済の正常化を目指して、力強く回復を始めれば、米国がけん引する世界景気の拡大が見込まれる。足元ではユーロやポンド、円に対して、ドル安が進んでいるものの、こうしたFRBメンバーの見通しに沿って、世界景気の回復が進むと、米国の将来の利上げなどを期待して、2021年の後半には、再びドル高に向かう可能性がある。
 


英国の優位性が見えてきたEUとのFTA交渉と、ユーロ相場、ポンド相場見通し   2020/12/14(月)16:17:32  
   12月13日が最終期限とされた、英国とEUとのFTA(自由貿易協定)交渉が、土壇場でさらに延長された。
先週は9日にジョンソン英首相とフォンデアライエン欧州委員長が直接会って夕食をとりながら、協議するとあって、この場面では合意期待が一気に高まり、為替相場では、ユーロとポンドが対米ドル、対円で買われる場面があった。しかし、会合後の会見では、ジョンソン英首相とフォンデアライエン欧州委員長がそれぞれ、漁業権、公正な競争の確保、紛争解決方法の3点で根本的な溝があるとの認識で一致。交渉は13日まで継続するとしながらも、10日にEUが来年1月1日以降、英国との通商協定がなくなる場合に備えて、英・EU間の6ヵ月程度の航空サービスの保証、陸路での貨物輸送と旅客運送の保証、船舶における漁業権の合意に至る時期までの保証について、緊急時対応策の取りまとめについて発表している。
 ジョンソン英首相は、合意できない場合は、紛争解決方法は、EUルールから、WHO(世界貿易機関)による仲裁方法が適用されるので、英国にとっては望ましい方向に向かうとコメントしている。さらに、英国政府は、英国とEUとの通商協議で合意がない場合は、英国海域に4隻の巡視艇を配備して、英国海域を警備することをほのめかしている。英国がEUとの合意がないまま離脱した場合、英国とEU双方の企業の製品に10%程度の関税がかかることが、英国とEU双方の産業界から懸念されているが、ユーロ/ポンド相場でみれば、ポンド売り・ユーロ買いに流れになることが予想されるので、英国企業から、EUへ輸出する場合は、ポンド安の恩恵を受けることになるので、仮に、10%程度、ユーロに対してポンド安になるならば、英国企業にとっては、手間は増えるけれども、関税がかかるリスクことによる販売量の減少懸念は相殺される可能性がある。従って、英国としては合意なき場合でも、英国の被害よりも、EU側の損失の方が大きいので、欧州が交渉条件を英国に譲歩することを狙っていると思われる。
 しかし、ユーロ圏で経済規模がトップの、ドイツとフランスは、現時点では英国への譲歩はしないと欧州委員会に圧力をかけており、こういった双方の軋轢が、貿易交渉が進展しない壁になっている。
 英国が譲歩しない場合、現実的な対応としては、英国はEUから合意なき離脱になるものの、実質的には、英国とEUとの通商条件は、ほぼ現状のままで、交渉期間延長につながるような合意がなされる可能性がある。その場合は、通貨ユーロとポンド相場は、米ドルに対して買われる流れになる見通しである。
 ジョンソン英首相は、交渉期間の延長はしないと明言しているものの、英国が有利な状況で、EUとFTAを将来的に結ぶためには、交渉期間を実質的に延長し、交渉を続けることが、英国、EUの産業界にとっても、ありがたいことにつながる。
 17日未明のFOMCで、どの程度の量的緩和策の拡大が決定されるかにもよるが、12月に入って、新型コロナウイルスのワクチン接種開始から、「有事のドル買い」意識が和らぎ、基軸通貨米ドルが全体的に売られる流れになってきている。英国とEUが合意なき離脱を選択した場合は、ドルが買い戻される局面が出てくる可能性がある。一方で、英国とEUが実質的に交渉を継続し、ユーロとポンドが買われ、ドルが売られる流れが加速する可能性も出てきており、年末年始のポジションは控えめな方がよいと分析している。
 

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